何故メディアでの外車の評価は高いのか
初めに断っておくが、これらの情報は私がかつて自動車ジャーナリズムの回りをうろちょろしていた事で知り得た知識を元にしており、当然誤解や間違いもあると思う。だから鵜呑みにしないで欲しい。と、いきなり謝ってしまうのは卑怯だと十分承知している上で敢えて書いてみる。
まず、クルマでもオーディオでもデジカメでも何でもそうだけど、雑誌などに記事を書いて掲載するためには、メーカーの協力が必要不可欠になる。インプレッション記事を書いたり、写真を撮影したり、あるいは広報用の写真を回してもらったり、時には製品になっていない試作品での評価を強いられることがある。
つまり、こういったメディアというのは、ある意味メーカーにお世話になって記事を作っている訳だよね。この時点でおいそれと製品を貶したり悪口を書いたり出来ない構造だというのは理解できると思うのだが、そんな中でも自動車業界というのは、意外なほどメーカーが真摯な態度でジャーナリズムの意見に耳を傾ける業界だったりする。例えば自動車雑誌で今度のトヨタの新型車は格好悪いとか、燃費がイマイチだとか、結構好き勝手なこと書いてあったりするよね。自動車雑誌しか読まない人は分からないかもしれないが、他ジャンルのモノ情報誌と記事を比較してみるといい。例えばオーディオ雑誌なんてほぼ例外なく提灯記事ばかり。
んで、そんな中で、なんでいつも外車の評価が軒並みいいのかというと、それはもうズバリ、悪口書くと試乗車貸してくれないから。それだけの理由です。
では国産車の場合はどうなの?というと、いくら悪口書いてメーカーを怒らせても、試乗用のクルマはそこら中にあるディーラーで借りてくることが可能なんだよね。だからこういった形での圧力がかけにくい構造になっている。もっとも、自動車メーカーの体質として「批判は素直に受ける」といういい意味での慣習があるというのが前提条件だけどね。他の業界では雑誌に広告を出稿しているメーカー(クライアント様)に対して批判的な記事なんて絶対書けない。
もっとも自動車メーカーでも例外的にM社のみは、間接的ながらもきっちりと圧力かけてきます。某雑誌の評価記事でもM社の車が不自然な位評価が高かったりするからね。昔の話になるけど、○○○マンテの居住性がエスティマの居住性を上回ってるってどういう事よ(笑)。それに、あの不祥事があった後でも、一生懸命「頑張れM社」のキャンペーンやり続けてる雑誌もあったよね。さすがに最近の業界の真相は知らないけど、一体どうなのかな。ま、こんな事もあって私はM社の製品は信用しないの…って、話がずれた。
外車の正規代理店なんて、零細企業ばかり、悪くいえば駅前の不動産屋みたいなもんだからね。負債を抱えると解散して輸入権を別会社に譲渡、ユーザー保証などの業務は一切放棄して、また違う社名で同じスタッフが勤務して同じ車を売っている…なんてことはザラだったりする。
そして当然そんな規模の会社だと、業務方針は社長の気分次第。要は自分の気に入らない事を書いた出版社には「試乗車貸さねー」といったワガママが当たり前のように通ってしまう訳。そして、それらの業者が扱っている車種が、ネタに困ったら○○○○などといった、みんなが大好きな海外メーカーのクルマだったりして、となるとなんとしても試乗車を借り出さないと記事にならないので、みんなで一生懸命提灯記事を書きまくる。そしてアホなユーザーもその提灯記事に騙されてホイホイと高い金を払って、更に「高性能車は取り扱いがデリケート、半端な腕だと車を壊してしまう」みたいなことが書いてあると、壊れても文句の1つもいわずにバカ高い整備代をお布施のごとく払い続けるんだよね。まあ、当人達が幸せならそれでいいんだけどさ、別に。
程度の差さえあれど、これと同じ構図はオーディオやカメラ、その他全般の業界にもある程度当てはまる。つまり元となるリソース(広報資産)が少ない所ほど、その代理店の意見がストレートに記事へと反映されやすいという事。まあ、そこまで露骨な圧力が無くても、貧乏ライターに高級外車や高級輸入オーディオを半年間タダで貸してあげる…なんていわれたら、人の心理として進んで提灯記事書いちゃうよね。逆にトヨタからカローラ半年タダで貸してあげると言われても嬉しくないもんなぁ。
あ…そうそう、そういえばバブルの頃はマツダが自動車ジャーナリストに出たばかりのロードスターをバラ撒いたという話もあったな。半年間タダで使った上に、その後は値落ちした中古価格で引き取ってもいいよという破格の条件。あの頃ロードスターに対する雑誌記事が軒並み評価が高かったのは、そういった理由もちょっぴりあるのかもしれない。ま、そんな事しなくても、ロードスターは立派な名車だけどさ。
そういえば、カー・オブ・ザ・イヤーなんてのも、話を聞くとその茶番ぶりでイヤになってしまうイベントの1つ。一応受賞車は、公正な投票で決められるという事になっているが、メーカーの間では「今年は賞を取りに行く」なんて言葉も交わされるほど、接待合戦、実弾(分かるよね)投下がすさまじいイベントらしい。そして面白いのは、過去の受賞車をじっくり眺めてみると分かるともうのだが、明らかに変な車が受賞していたり、時期によっては特定のメーカーが連続して受賞していたりする事。もう車に興味がない人間から見ても露骨に不自然なんだよね。
ちなみに大メーカーのトヨタは、早々にこの茶番劇から足を洗ってしまったというのが印象的。トヨタの強さとは、こういった点にもあるのかな、なんて思ったりもする。もっとも、最近では以前ほど派手な接待合戦も無くなったみたい。大体、カー・オブ・ザ・イヤーなんてイベント自体に普通の人は興味持たなくなったもんな。
昔オーディオ評論家の長岡鉄男が「大宗教は叩いても怖くないが、小・中規模の宗教は叩くと仕返しが怖い」みたいな事を書いていたけど、自動車業界、いや…その他諸々の業界ほとんどは、この法則に当てはまるみたいですね。だから零細代理店が殆どの外車の記事は、軒並み誉め言葉しか書いていない訳。
それでも外車好きだけどさ、私は。