無臭の世界
ここの所風邪がずっと続いていて、もういい加減イヤになっているのだが、そんな中、私の嗅覚がここ数日ほぼ全く機能していないのに気がついた。電車の中にいても他人の体臭や、女の香水のにおいが全くしない。
考えてみればものを食べているときも全く臭いがしないので、いつもの食べ物が全然違った味に感じていた。初めは風邪のせいで味覚が狂っているのかと思っていたのだが、どうも違うみたい。味覚というのは嗅覚と密接に関わっていて、同じ味でも無臭の食べ物というのは、通常とは違った味に感じてしまうということなのだろうか。
ためしに、引き出しにある「CHANEL ALLURE HOMME」の瓶を、キャップ開けて鼻の前に持ってきても、全然臭いを感じない。こりゃ結構重傷かも。
今頃嗅覚の異常に気がついたということで、実は人間の感覚の中で嗅覚が占める割合というのは実に少ないんだなと改めて思う。コレが別の動物、例えば私にとって今身近な動物といえばフェレットだが、彼女(雌なのだ)にとって嗅覚と音というのは非常に重要な感覚であり、特にフェレットというのは、周囲の臭いから空間を立体的に捉えることが出来るという、人からすると全く持って理解不可能な能力を持っているのだが、逆に失明してしまっても、通常生活にはあまり影響がないとのこと。実際飼い主の中には、自分と暮らしているフェレットが失明していることを、獣医さんに告げられて始めて知る人も多いという。ちなみにウチのフェレットも歳で大分白内障が進行しているみたいで、失明まではしていないが、大分目は見えなくなっているようだ。それでも私の後を付いてかけずり回っているので、人間の感覚でいうと目が弱っているとは思えないだろう。
しかし、改めて鼻が効かないことを理解して世界を認識してみると、無臭の世界というのは、なにやら夢心地、ちょっぴりリアリティに欠ける世界という気がして、やっぱり変。こういう気分になっているのは、単純に風邪のせいかと思っていたのだが、どうやらそれだけではないようだ。