メーカーによる圧力
田中希美男という「デジカメ評論家(?)」が、パナソニックで新しく発売するフォーサーズデジタル一眼レフカメラについて、ちょっと辛辣なコメントを書いていたのが、数日後に消されたということで、ネットの各所(といっても、主に2chとkakakuだけど)で話題になっています。デジカメウォッチの記事でもサンプル画像が消されたようで、そうなると皆さんが単純に考えつくのが「メーカーの圧力」なんでしょうか。だもんで、各所で「圧力はゆるさん」とかいう方向で議論が進んでいるみたいです。ただ私個人的には、この程度の記事修正は「圧力」って程でもないんじゃないかなぁ、と思います。
いや、実際こういったマスメディアに対して、スポンサーからの圧力というのは存在します。だって、私自身メディアに圧力をかける側にいたこともあるんですから(笑)。
出版社に対して、「なんだ!あの記事は!」とか「広告引き上げるぞ!」という怒鳴り込みの脅しは日常茶飯事…って程でもないですが良くあることで、更に狡猾なのは「次号で巻頭見開き特集記事を組め」とか「人気投票で1位を取ったことにしろ」とかいうのもあります。そういう記事というのは、活字というか、雑誌をを読み慣れている人なら何となく匂いますよね。そう、そのような提灯記事を読んであなたが思ったとおりの事が裏で起きています。
ただ「何でもかんでも圧力だらけでメディアは信用しない」というのも間違いで、実際の現場では、雑誌でもなんでも、書かれる記事のおおよそほとんどは、そんなことを考えながら書かれている訳じゃありません。ライターも編集者も意外と天然で書いていることが多いです。
例えば今回の例ではカメラですけど、普通人間の心理として、新製品が届いてちょっと使ってみただけでは「お、いいな」と思うことの方が圧倒的なわけで、何も考えていなければ大体誉め言葉の方が多くなっちゃうんですよね。だもんで「メディアがいつも製品を誉めた記事しか書かない!」という批判はちょっと的を外していると思いますし、また誉めている記事の方が、概ね真実により近い文章だったりします。
もちろん悪口をウリにしているメディアやライターもいるのは事実で、そういう人は自称「真実しか信用しない」というひねくれ者の読者達に好評です。メディアによる誉め言葉は「スポンサーの圧力だ」というのなら、それと同じでメディアによる悪口も「スポンサーの圧力」というロジックも成り立つと思うのですが、何故かそういう人達は「悪口を書く人が真実を突いている」と頑なに信じてしまったりします。手に負えませんね。実際、圧力によって他のメーカーの製品について批判的な記事を書かせる、なんてこともあるっていうのに…。
ということで、今回のパナデジ一眼騒動については、圧力というより、普通に「製品仕様を変更するので古いのは削除してください」とデジカメウォッチ編集部にパナソニックがお願いしたんでしょうし、田中希美男については、おそらく製品β版のサンプル画像を勇み足で個人サイトに公開したので、パナソニックから「困ります」と普通にクレームが入っただけだと思います。噂通りの圧力が入ったのだとしたら、必ずどこかにその痕跡って残りますからね。
ま、私だってその現場にいる訳じゃないので、憶測でものを語っているレベルでしかないのですが…。