おじさん自転車講座/長尾藤三
インターネット時代になって、本というのはその役割もそうだが、その中身の文章についても変貌を遂げつつあると思う。一言で言えば“隙がなくなってきた”という感じだろうか。内容の正しさとか、内容の質に関してはまた別な話になると思うが、とにかく、近頃出版される本の文章は「突っ込みを入れにくい」文体に変貌しつつあるような気がする。
初版は1994年。まだインターネットなんて、相当の変わり者しか手を出していなかった時代だ。そして今、そんな時代のこういう本を読んでみると、なんだか隙が多いというか、もうちょっと言い方を変えると、適度に緩い文章だという印象がある。
本書は、もう50歳になった著者が、如何に自転車ライフは楽しいかを、自分の生活と体験を中心に語っているエッセイ集。この当時おきまりの文明批判に底の浅さを感じるが、かといって知性の無さを感じるわけでもない。私的には、こんな所に適当な緩さを感る事ができる。
お勧めはしないし、内容を誉めたりもしないが、なんだか不思議と1990年代前半の匂いを感じることが出来た作品。私的には読んで良かった本だと思っている。
おじさん自転車講座/長尾藤三