人類は衰退しました/田中ロミオ
遠い未来、人類は衰退の時代を迎えていた。人々は明日の希望も持たず、ただ滅びの道を…。
という世紀末小説ではなく、ビジュアル的には「横浜買い出し紀行」から数世紀後の世界…みたいな感じじゃないかと思う。少なくとも私はそんな風景を思い浮かべながら読んだ。
そして本書は、衰退する我々人類の代わりに地球の主となった「妖精さん」との変な交流を描く…といったお話。
衰退した人類にはかつて(今?)のように、熱い情熱や欲望、野望などは存在しない。何気に不思議な妖精さんとのやりとりばかりが印象に残りそうだが、私はその「自然に衰退した人類の日常」を違和感なく書いているところがとても興味深かった。
いつか迎える人類の終焉は、カタルシス的なものではなく、こんな風にゆったりと終焉していければ幸せだろうな…と思った。
内容的には、特に感動をもたらす小説ではないが、読んでいる時間がどことなく心地よく、それだけで充分満足。続編も出ているようなので、買って読んでみよう。