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▼2008年02月10日

流線形シンドローム/原克

 とても面白い本だった。

 本書は、主に第二次世界大戦以前、世界を席巻した「流線形」という言語について、主にアメリカ、ドイツ、日本の状況を比較して当時の世相を語っている。
 その時代に発刊された科学雑誌やファッション誌、プロパガンダ誌などからの引用も豊富で、更に図版も豊富で、眺めているだけでも楽しいし、資料的価値も高いと思う。惜しむらくは、本文中の図ももう少し大きく掲載してくれれば、原稿の文字が直接判別できて、より資料価値も高まったのだが…。

 「流線形」という表題にイメージが引っ張られるが、実は各国の世相史、あるいは大衆史の実例としても興味深い。短くまとめると、アメリカは徹底的な商業広告によって世相が引っ張られる国。ドイツは国家主義・全体主義が世相を作る。そして日本は大衆からの突き上げで世相が形成される。…いや、現在においてもこれらの国はあまり変わっていないのではないだろうか。21世紀になった現在でも、アメリカは商業広告の国であり、ドイツは国家主義、日本は大衆文化の国だろう。また、アメリカの商業主義にはある種の排他主義と優性思想。ドイツの国家主義はエコロジーというか国家に対する土着的嗜好。日本の大衆文化はおっぺけぺー(笑)。などと、各国の流線形騒動の裏には、そのような性質が見え隠れしているというのも興味深い。そういう意味で、歴史は繰り返すというか、現在も全く変わらないというか…やっぱり歴史を学ぶ事は現在を知る事だよな…などと、いろいろな事を考えてしまった。もちろん「流線形」にも詳しくなれるよ。

 更に一言。本書では流線型「ストリームライン」という言葉を、各国の事例全てで日本語の「流線形」と読み替えているが、多分日本語で想起される「流線形」と、英語の「ストリームライン」(ドイツ読みだと「ストライムライネン」か?)は意味が違う。本書に限って言えば、この「流線形」という言葉は、各国語で表記したほうがより当時の世相に近かったのではないか…とも思う。ちなみに度量衡についてはいい加減ポンド・ヤード法で表記するのは止めてほしい。

 しかし「流線形思考(ストリームライン・ユア・マインド)」なんて本は、明日の本屋さんでビジネス書の棚に並んでいてもおかしくないな。というか内容すら同様でも違和感ないかも(笑)

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