太平洋戦争について
いや…大東亜戦争でもいいけど(笑)。
今テレビで太平洋戦争開戦前夜についての特集をやってるんだけど、どうも日本人が作るこの手のドキュメンタリーは、どちらが先に仕掛けたか?という、ある意味どうでもいい部分ばかりに焦点を当てすぎていると思う。もし、日本かアメリカ…どちらかが先に仕掛けたという結果によってそれ以降の歴史が全く変わってしまう問題ならいざ知らず、結局あの戦争は起きるべきして起きた…つまり、何故日米双方とも「戦争」に至る状況に陥ったのか、そっちの方が問題だと思うんだけど。
他、太平洋戦争物だと、日本人が書いた書籍で多いのが「こうすれば勝てた」とか「この失敗が敗戦を決定づけた」みたいな本。あのさ…当時の状況を調べれば調べる程、日本がアメリカに勝つなんてあり得ない事なんだけど…。ちなみに今自衛隊がアメリカに戦争を仕掛けて勝てる訳ないのはみんな判るよね。でもさ…当時の日本とアメリカの状況って、今のアメリカ軍と自衛隊以上に戦力も国力も差があるよ。近代兵器は一撃必殺が多いので、当時のスタイルである兵隊を大量に消費する戦争スタイルを考えてしまうと、それなりに日本は善戦しているようにも思えるけど、少なくともパワーバランスで考えると、今の自衛隊は当時の日本海軍より強力。その自衛隊を持ってもアメリカに勝てる気がしない訳だから、どれだけ無謀な戦いだったのかと…。
実は私自身も、中学生時代にボードシミュレーションゲームに触れるまで、太平洋戦争で日本軍はアメリカ軍に対して善戦していると思っていた。でもそれは、作戦…戦術レベルでそういう局面もあった、というだけで(それはそれでポジティブに受け止めていい事だと思うけど)、戦略面で見ると、日本は全くアメリカの相手ではなかった…というのを思い知らされた。大体アメリカ人が作る太平洋戦争の戦略級ゲームって、マップにアメリカ本土が含まれてないのよ。それにルールを見ても日本がアメリカ本土に侵攻して完全勝利という勝利条件はなく、ある局面で日本が大成功を収め、更にヨーロッパ戦線でドイツ軍が勢力を盛り返し、その時点で少しだけ日本にとって有利な条件で講和を勧める事に成功…というのが、ゲームにおける日本最高の勝利条件だったりする。逆にアメリカの勝利条件は、日本本土の完全占領。敗戦条件は日本から有利な講和を引き出せなかった、というレベル。少なくともアメリカ本土を日本人に占領されるなんて状況は、全く可能性がないSFレベルの話だという前提でゲームのデザインがされている。私も初めのうちは「所詮アメ公が作ったゲームだし自国有利なのは仕方ない」と考えていたけど、色々と調べるうちに、どう考えても当時の日本にアメリカを完全に打ちのめす力はなかったと改めて理解できた。米国本土占領なんて夢のまた夢、富岳なんて今でいう宇宙戦艦ヤマト並の夢物語でしかない。
おそらく、上記の事柄って、軍ヲタ、あるいは軍事少しは興味がある人なら、当たり前の見解だと思うんだよね。当時の日本に完全勝利なんてあり得ない。あくまでも存在する勝利は、戦略条件としての勝利条件までの話であり、真珠湾でたまたまいなかった空母を完全撃破しても、ミッドウエイでは日本軍の一方的勝利を収めたとしても、アメリカ本土が日本48番目以降の県になる事はあり得ないし、アメリカ人が全て日本語を必修で学習している事もあり得ない。
そういう事を全て理解した上での夢物語としての「日本軍完全勝利!」なんて与太話ならともかく。多分それらの書籍もそうだし、テレビ番組を作って更に興味を持ってみている人達もそうだと思うけど、ひょっとして当時の日本軍が、可能性は低いにしても、ワシントンを占領してアメリカ全土を支配下に置ける…なんてSFをマジで信じてる人っているでしょ。いや、間違いなくいる。あの手の本やテレビのコンテンツは、それらを前提に制作されているとしか思えない。
もう、この時点で過去の過ちを繰り返しているんだよね。信じたい事ばかりを信じて、信じたくない事実は信じない。あの手の「太平洋戦争、こうすれば勝てた」なんて感じのタイトルの書籍を本屋さんで見る限り、「ああ…日本人って昔から進歩してねぇな」なんて思ってしまう。
ひとつ象徴的な事柄として、アメリカと戦争状態になった日本では、一般生活でも英語が語源の言葉を使う事を禁じた(実は政府も軍もそんな指令は出してなくて、当時の新聞社が勝手に国民に対して行った愛国キャンペーンの一環だったみたいだが)日本の現状と、逆に日本と開戦状態になって、日本の歴史や日本語を学ぶ人が増大したというアメリカという国。
このことを考えてみるだけでも、当時の日本が如何にダメで、また日本の完全勝利などあり得ず、また、現代の日本人が如何に当時の日本人と比べ変わっていないのか、理解できる人には理解できると思います。
歴史は旦那芸じゃないぜ!少なくとも日本以外の国では。
コメント
ほぼ同感なんですが、恐ろしいのは、今世界でも同じ事が起こってることです。同時多発テロ(7年前)から始まりました。あの犯人は「こうして死ぬことが正しい」との宗教に、殉教したと考えています。他にも「自爆テロ」が後に相次ぎました。この思想は、当時の日本にも存在したんです。とても残念ですが、特攻隊の方々の遺書に明確に記されています。国家を挙げて思想を縛る(大戦当時の治安維持法、不敬罪)事がどれほど恐ろしいか・・。今どんどん崩れている北朝鮮でも同じ思想が見受けられます。「死ぬことが正しい」などという思想は、この世に絶対にあってはならない!人をいつくしみ、尊敬しあう世界なら、戦争は起きるはずがないんですから。人殺しは憎むべき犯罪!戦争は国民を殺人犯にする行為と考えます。
投稿者: world hanter7 | 2008年12月09日 01:20
こんにちは。
死ぬ事が正しい…確かにそんな思想はおかしいですよね。
個人のレベルでは、時としてそういう決断もあるかもしれませんが、集団やましてや国家がそのような思想を押しつけていい訳はありません。
そういうインチキに騙されない為には、私たちも普段から勉強しないといけない訳で。
今の日本にある、軍事的な思想をタブー視する風潮は、なんだか昔の時代に似てるなと思います。
正しい軍事知識を身につければ付ける程、反戦になるのは間違いないのに。
投稿者: よっち | 2008年12月09日 06:44