里という思想/内山 節
現在社会における様々な問題を、あえてグローバリゼーションとは違うスタンスで考えてみるのは、近頃の思想界では割と見られるアプローチのような気がする。が、本書の場合は、その思想の元を、あえて群馬県上野村という場所と指定しているのが、わかりやすい(特に個人的にこの場所はよく知っているので)。つまり「里」からの論理で世界を考えた思想である。
「里」から考えるこの世の中では、例え科学的には地動説が正しくても、天動説的な考え方により、毎日が動いている…というのは、別に里に住んでいなくても当たり前な事で、私たちはその「科学的真実」を、「感覚的真実」と折り合いを付け生活する事に慣れすぎているのかもしれない。
現在の世界を支配しているグローバリゼーションと、資本主義における正義、そして、世界のための正義はひとつであるという、曖昧な根拠の元に動いている先進国社会。それらの警鐘全てには賛同できないとしても、国際化という、ある意味全体主義思想にも通じる考え方へのカウンターとして、こういう考え方は大事にしていきたいと思う。
やはり、人間は便利になりすぎたのか…それとも、生きる事に必要ない情報を貯め込みすぎたのか…。
「里」という思想(新潮選書)/内山 節