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▼2009年08月06日

スポーツとしてのハイブリッド

 鉄道の話だが、子供の頃「電気式」と呼ばれるディーゼルカーの存在意義が判らなかった。何故なら、搭載されたディーゼルエンジンで電気を作り、その電気でモータを回して動くのである。「え?エンジン回すなら、それで動輪を動かした方が効率的じゃん…」と。

 でも、クルマに当てはめて考えてみると、その構造は大きなメリットになる。ある程度スペースユーティリティーが確保されていれば、クルマの運動性に対してルーズでも許されるセダンなどの大衆車とは違い、レーシングカーやスポーツカー等、自動車としての効率や運動性を追求するクルマにとって、エンジンの重心と、トランスミッション、デフレンシャル等の搭載位置は、エンジニアに対して、想像力と妥協の両方を求められる項目であったからだ。

 エンジンの重心は、バルブやカムの構造によって変わるが、パワーを取り出すのはクランクシャフトであり、その位置が車体に対するエンジンの搭載位置を決める。で、そのクランクシャフト回転軸は、当然ながら、後工程である、クラッチやトランスミッション、デフレンシャルの位置を支配する。そして、そのクランクシャフト回転軸とズレた位置で、クラッチはともかく、トランスミッションやデフレンシャルを配置しようとすると、当然ながら、そのズレた位置まで回転軸を伝えるためのギアやベルトが必要になる。当然、それらの追加部品は、自動車の重量を増大させてしまう。

 では、エンジンを発電機に見立て、それが生み出した電力をモーターを介して駆動輪に伝えるという設計を採るとどうか。まず、モーターで車輪を駆動するならば、トランスミッションが必要なくなる。何故なら、モーターは原理的にゼロ駆動の状態がもっともトルクを発生するから。つまり、起動状態で最大トルクを発生するなら、最大トルク発生回転数に近い位置に車軸の回転数を可変させる「トランスミッション」が必要なくなる。というか、上記の前提なら、クラッチすら要らない。
 また、その駆動モーターを車軸ごとに独立して配置させ、それぞれのモーターに対して、車体の状態によって最適な回転数を発生させるプログラミングがあれば、デフレンシャルも必要なくなる…というか、左右車軸のモータへ伝えるトルクを任意にコントロールすることによって、サーキット仕様のガチガチなLSDと、街乗り仕様の穏やかなLSDを、プログラミングだけでコントロールすることが出来る。で、それらのユニットを繋ぐ手段は、昔のレーシングカーやスーパーカーが採用していた、ギアやベルト、チェーンなどによる物理的動力伝達部品に頼らずとも、ブラストマイナスの電線2本で済んでしまう訳だ。
 そして究極には、車軸とモーターが直結?個人的にはホイール内モーターには懐疑的なのだが、前輪でも後輪でも、左右独立したモーター2つが、車軸に直結するという構造はアリかもしれない。そして、それを駆動する為に電気を作るエンジンは、充電池などを併用すれば、相当小さいモノでも問題ないはず。
 モーター自体の重さはそれなりになると思うが、それでもクラッチやトランスミッション、デフレンシャルが必要なくなれば、重量的にもマイナスになるだろう。また、エンジンの搭載位置がフリーになるのもかなりのメリットがある。潤滑をドライサンプ化して、許す限り低い位置に搭載することが可能になる。駆動モーターへは、オルタネーターからのケーブルがつなげればいい訳だから。もっとも、モーターの動力を生み出すだけのエンジンでいいならば、そもそも搭載位置を最重要に考える必要すらない小さなエンジンでも済むかもしれない。ちなみに、小規模のオフィスビルなら、軽自動車程度のエンジンがあれば、ビル内の使用電気は全てまかなえちゃうという計算もあるんだぜ。

 自動車のイノベーションのほとんどは、スポーツカー、あるいはスポーティーなクルマから生まれてきた。これらハイブリッド車の特徴を意欲的に追求していけば、かなり面白いスポーツカーが出来るような気がするね。

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