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▼2010年02月25日

CHORD Chordette Gem

100225-01.jpg 英国CHORDと言えば、高級オーディオ機器メーカーとしてマニアには有名だが、そのコードにしては比較的手頃な値段で、Bluetooth対応のUSB DACが発売された。その名も「Chordette Gem」という。

 CHORD社の製品にしては珍しくカジュアルな位置づけで、本体のカラーも全7色。USB/DACとしても使えるが、やはり大きな特徴は、Bluetoothで音楽信号を受信できること。Bluetooth対応機器であれば、携帯プレーヤーや携帯電話に入っている音楽を、高品質・ワイヤレスで再生することが可能だ。
 実際には、携帯電話に入ってる「着メロフル」を再生するために、CHORDとしては手頃とはいえ、こんな値段の機器を買う人はいないと思うが、取組みとしては面白い。

 無線機能については、同社の高級シリーズDACであるindigoでも同様の機能を備えており、同じ英国でネットワークプレヤーに積極的なLINNとの差別化を考えているのか、CHORDはオーディオ機器の無線化によって、アイデンティティーを確立したいという思惑があるのかもしれない。

 DACとしての特徴は、無線だけでなく、44.1kHzは88,2kHz、48kHzは96kHzと、デジタル信号を一度アップサンプリング処理をしてアナログ変換すること。また内部のBluetooth回路とその他の回路は電源を完全に分岐させ、ノイズなどの悪影響が出ないように工夫されているらしい。

 早速音を出してみた。まずはiPhone内のデータをBluetooth経由で再生。

 ちなみに、私のシステムで今まで使っていたDACは「AudioAlchemy Dac-in-the-Box(ちょっとページ下にスクロールしてね)だったのだが、これもまぁ…古いDACにしてはなかなかの美音系で、中域の滑らかさは今でも気に入っているのだが、やはり低音などについてはどうしてもパンチが不足していた。

 で、今回の Chordette Gemだが、予想以上の低音もりもり系で、むしろCHORDのイメージだと、もう少しおとなしい音を出す製品かと思っていたのを裏切られた。なかなか幸先はよい。
 ただBluetooth経由だと、どうしてもオーディオクオリティとしてはちょっと不満が出る。これはBluetoothのせいじゃなくてiPhoneの力不足なのかもしれないが…。

 次は本命、PCからUSB接続での再生。再生ソフトはiTunesを使用。夜間の再生だったので、大きな音は出せなかったのだが、なかなか…可能性を感じる音を奏でてくれた。しばらく通電しておいて、更にセッティングなどを煮詰めれば、もっといい音を出すだろう。

 接続直後の評価なので何ともいえないが、変に高級機であろうとする音のまとめ方ではなく、その辺は割り切って、むしろ元気でシャッキリとした音にチューニングされているようにも感じた。その辺の評価については、もう少し使い込まないとわからないが、今のところは好印象だ。

 最近のCHORD製品のアイデンティティーとなっている「ボディの一部が窓になっている」スタイリングも含め「手の届く高級DAC」として、なかなか面白い製品かもしれない。

OLYMPUS E-410 + Zuiko Digital 35mm F3.5 Macro


▼2010年02月22日

Brompton Bicycle

 ようやく届いた謎の洋書「Brompton Bicycle」。注文したというエントリを書いたのがこの頃だったから、約3ヶ月待たされたのか…。

 届いてみると、当然ながら洋書「かに文字」なので、私には何がなにやらさっぱりです(笑)

 内容としては、世界のフォールディングバイクの歴史、ブロンプトンのプロトタイプから誕生まで、そして各モデルの変遷。またブロンプトン以外のフォールディングバイクについても紹介されていて、なかなか面白い。

 文字ばかりではなく、写真も豊富なので、ブロンプトンがお好きな人にとっては、洋書の入門としても良いのでは?かわいいお値段だし。

 今なら即納みたいですよ。

港町のかたち—その形成と変容/岡本哲志

 交通の歴史に興味を持っている。昔の人たちが、何を考え、何を求めて、世界を駆け巡っていたのか。そしてその足跡は今でも残っているのか…そんな事をよく考える。

 本書は、そんな日本の交通史の中で、かつては大量輸送の花形であった、海運で栄えた街の足跡を辿るという本。面白いのは、この手の現地調査ではその現地に入るまでの交通手段にはあまりこだわりがない事が多いが、本書については可能な限り海の側から訪れ、また海の側から街の景観を確認していること。

 かつての水運と言えば、海もそうだが、日本は河川の水運も盛んだった。私がちょうど子供の頃は、近くに流れる川を利用して、海から大量の木材をプライウッドの工場に運び込んでいる姿をよく見た。牽引しているのは、焼き玉エンジンを搭載した「ポンポン船」そして牽引している材木の上には、鳶のようなおじさん達が、器用にくるくる回転する材木の上を歩き回っていたものだ。そんな風景も、私が大人になることには、すっかり消えて、川からは人の流れが消えた。

 同じ事が海にもいえると思う。大規模なコンテナ船やタンカー、フェリーなどは就航していても、もっと身近で小回りのきく交通手段、運送手段として、水辺は漁業を行っている人以外には「利用されない」空間になった。関西での事例は余りよく知らないが、特に関東以北では、人と海の距離感は、だいぶ離れてしまっているように見える。東京湾なんて内海なんだし、本当はもっと細かく旅客船が就航していてもよいような気もするのだが…。

 そのように、かつて交通の要所として栄えた日本の港町は、今では多くが、小規模な漁業港としてのみひっそり生き延びているのがほとんどだ。しかし、そのある種都会の喧噪から隔離され、穏やかにも見える港町は、陸上交通が主流になる前は、物流の拠点として、新しい物や情報であふれていた都会だったのである。

 近代社会が、納期が天候などの要因で左右されやすい、近・中距離海運から撤退しつつあるのも理解できるが、逆に言えば、そのような必要性の薄い用途において、もっと水運を積極的に利用できる社会というのは、創造できるのではないか。本書を読んでそんなことを思った。

▼2010年02月21日

創るセンス・工作の思考/森博嗣

 ミステリ作家、森博嗣のエッセイ。本屋さんで立ち読みしてみて、面白そうなので買ってみた。

 早速読んでみたのだが、この本のような考え方は、工作する人だけではなく、クリエータやプログラマにも身につけてもらいたいなと思う。

 私も子供の頃は、工作少年だった。家の周りは、丁度新興住宅地、工業開発地に囲まれていて、建設中で放置されている材木やトタン板など(放置していたのではないかも知れないが)、様々な素材を拾って、色々なモノを作った。
 子供だから設計図とか考えずに、思いつきで、のこぎりで切ったり釘打ったりという、工作と言っていいものか判らないレベルだったが、それでも楽しかった。また、家の中では、厚紙やノリ、セロテープなどを使って色々おもちゃも創った。本書の中にある「厚紙と輪ゴムで創った、自動販売機のおもちゃ」も、すぐに作れと言われても無理だが「あ…こんな方法かな…」とは何となくはイメージできる。というか、動作の仕組みを考えるのもそうだが、厚紙のあの素材感や強度など…そういう部分でのイメージが出来るのは、やはりそのような工作の経験があったからだろう。

 話はちょっと変わるが、真面目な人生を送っていないような私でも、たまに人から相談を受ける事がある。「デザイナになりたい」「Webディレクタになりたい」そういうときの私の答えはまず「なればいいじゃん」である。

 デザイナになりたいと思うのなら、その瞬間から、色々な作品を作ればいいし、Webディレクターになりたければ、自分でサイトを立ち上げて、そのサイトをセルフディレクションすればいい。幸い、今ではPCもデジカメもブロードバンド回線も無料のサイト開設に使えるストレージも、とても低いコストで手に入る。私がWebサイトを作り始めた前世紀とは大違いだ。

 こんなに恵まれた環境で、自らの意志で創造活動をスタートできないというのなら、陳腐な言い方をしてしまうと「あなたには向いていない」ということなのだろう(もっとも、その質問で「デザイナとして食べていきたい」「Webディレクタとして収入を得たい」というなら、また解答は別になる。私だってまだ判らない)

 最近はプログラマについても同じような事を感じる事が多い。私自身はコードを全く書けないし、そもそもプログラムなんて書こうと思った事もないのだが、それでも「こんな機能をもつプログラムを作りたい」という要望に対して難しいというプログラマに「このデータのこの部分を取り出して、それをキーにしてこの形でまとめ直して、その後必要なデータを抽出して…」みたいに実現可能な概念を提示するという事が多い。その概念を教わると「なるほど」と納得して、彼等はコードを書き始めるという感じ。

 このような事が出来るから自分は偉い、とか言うつもりはないけど、それでも彼等に対して感じてしまうのは、最初の一歩…つまり「創り始める」という思考のプロセスが訓練されていないんだな…ということ。以前もツイッターでつぶやいたのだが、こういった仕事をやりたいという人は、それこそ自分のセンスやアイディアを自ら出力したくて仕方ない人達かと思っていたのだが、最近はそうでもないようだ。

 私はビジネス書をほとんど読まないが、世の中の評判や、本屋さんでのタイトルを見る限りでは、「与えられた課題を如何に効率的にこなすか」という情報に偏りすぎている気がする。
 そうではなく、やはり仕事の基本は、自ら何かを創り出して、それで報酬を得る事ではないのかと、こういう仕事を続けてきた私はそう思っている。

 本書は、物作り系エンジニア向けに書かれたと思える文体だが、その考え方は、全ての仕事をしている人にとって役立つものだと思う。どんな状況でも、どんな年齢になっても、想像力は常に鍛えよう。

▼2010年02月11日

新・井沢式日本史集中講座「鎌倉・新仏教」編/井沢元彦

 井沢元彦による、日本史の本。彼の著作は別に好きという訳ではないのだが、この「日本史集中講座」のシリーズのみは読み続けている。
 それは、読み進めるのが非常に簡単な上、他の本では難解で理解しにくい「日本人の宗教」について、分かりやすく解説してあるからだ。

 私達は日本人を「無宗教である」と教えられてきたし、また、今でも私達日本人は「無宗教である」と思い込んでいる。でも、井沢氏によれば、それは間違いで、私達日本人のベースには、古代から延々と「言霊信仰」と「和」があり、その上に外国から入ってきた仏教やキリスト教などをアレンジして用いている…という考え。

 確かに、日本人による「言霊」の扱いは、論理性を欠いているなと感じる。葬式や結婚式で言ってはいけない言葉から、会社組織の会議でも「潰れるとしたら…」という言葉は「不吉で不穏当」として言葉で発したがらない。また「話し合えば判る」というのも、「話し合う」事を真っ向から否定する人は日本人ではほぼいない。実際は話し合う必然性があるから話し合う訳で…「話し合う」という意味をすっ飛ばして「話し合いは大事」などと言っている。冷静になって考えてみれば、これらの理不尽な行動は、ある種の宗教観に支配されている行動だとしか思えない。

 そんな事を、このシリーズでは延々と書いてあります。文章は非常に読みやすいので、今までこのような本を読んでいなかった人でも、楽しく読み進められる筈です。

FREE/クリス・アンダーソン

 サブタイトルは「無料からお金を生み出す新戦略」となっている。

 世の中のサービス…特にデジタル系の、複製のためのコストが限りなくゼロに近いものは、何らかの手段で遅かれ早かれ、重力に惹かれるかのごとく、無料化の流れには逆らえない、との事。それならいっそのこと無料に…なんて話も書いてある。
 個人的には、こういった「無料化」の流れというスタイルについて、最近色々考えていた事もあり、なかなか興味深い記述が多かった。

 読後、デジタルで提供されるコンテンツが無料化の流れに向かっているのもそうだけど、、同時に、デジタルの世界は、仕事の「ワークシュア」を先鋭的に実現しつつある世の中なのかな…なんて気もしました。

 ちなみに本書には日本語の公式サイトもあるのですが、微妙にこの著者が言いたかった事と、趣旨がズレているような気もします。

▼2010年02月09日

Happy Hacking Keyboard Professional JP 部にようこそ!

100209-01.jpg 巷では「HHKB」と呼ばれているPFU社の「Happy Hacking Keyboard」その中でも、私は「Professional JP」というモデルを愛用してます。色は黒…ではなく墨です。単なる黒ではなく、微妙な陰影を見せるのが、まさに「墨」という感じです。写真ではキートップがちょっと手垢がついてるように見えますが、新品でもここはちょっとミドリがかってるような不思議な色。

 昔はマカーだった私にとって、最近の完成機に付属する安っぽい感触のキーボードってのはもう耐えられないと思ったのが、このキーボードを買った理由。あと、WIN機ってのは、なぜかマシンによってFnキーの位置が違ったり、Ctrlキーがズレていたりと、マシンを変えるたびにキー配列を覚え直さなければいけないという理不尽な苦労もイヤだったし。

 で、色々とキーボードを漁っていてたどり着いたのが、このHHKBという訳でした。ちなみに私にとってのフェイバリットキーボードは、Apple II GS Keyboad。今の市販品ではこのHHKBが一番キータッチが似ていると思ったのと、あと普段ノートPCを使って慣れているため、テンキーはいらないという理由です。というか、数字計算する訳じゃなければ、あのテンキーの部分ってむしろ邪魔。それだけ机の上も狭くなりますし、そう考えると使いやすさを追求しつつ、極限まで設置面積を小さくしたこのスタイルは、資料で机の上が埋まりがちな事務職の人には助かるのではないでしょうか。実際このキーボード、UNIX系のプログラマに愛用者が多いのは当然として、文章を打つ仕事をしている人にも人気があるとの事。

 キータッチは本当に素晴らしいです。もう結構使ってますが、今のところ劣化も感じられません。コツコツとしたこの感触は、文字を打っているのが楽しくなってきます。
 ただ、キー配列については若干特殊なので、万人に勧められるってものでもありません。ちょっと慣れが必要な部分がありますが、逆に言えば、一度慣れてしまえば、PCは入れ替えても、キーボードは壊さない限りずっと使い続けられます。

 どこかのWebページか雑誌かで「キーボードは現代における文房具」なんて言っていた人がいましたが、確かにPC本体よりもずっと長く愛用できるし、ちょっと上質な筆記具を買ったと思えば、そんなに高い買い物でもないかもしれませんね。もちろん、マックでもWINでも使えますよ。

iPhone 3GS

▼2010年02月07日

黒船前夜/渡辺京二

 副題は「ロシア・アイヌ・日本の三国志」。著者は「逝きし世の面影」で有名な渡辺京二。後書きには「逝きし世の…」の続編となる「日本近代素描」シリーズの2巻目にしようとしたが、思いとどまった…とある。

 本書で語られる時代は、ベニョフスキーの書簡事件から、ゴロウニン事件まで。その間に起きる、日本とアイヌ、そしてロシア三国の動きや思惑を明らかにしてゆく。

 旧世代の幕末史でよく語られる「黒船のショック」と、始めて見る異人に慌てふためく日本人…というステレオタイプのイメージは、最近になりだんだんと否定されつつあるが、本書においても、見知らぬ外国人に対して冷静な判断で対応する徳川時代の日本人が活き活きと描かれており、また、同じく旧世代のアイヌ史でよく語られてきた、内地(本州に住む日本人)の人間に一方的に搾取されるアイヌ人という、またステレオタイプなイメージについても警鐘を与えているように見える。少なくとも、徳川時代のアイヌ人は、幕府から一方的に支配されるだけの存在ではなかったという事のようだ。

 このゴロウニン事件の後、日本とロシアの通商交渉は一旦休止し、もう少し時代が下った時に、アメリカからはペリー、ロシアからはプチャーチンが、ほぼ同時に日本を目指し、タッチの差でペリーの恫喝外交が実を結ぶという結果になった。その時どさくさ紛れに通商条約を結んだ列強の中で、たった一つ、いわゆる「不平等条約」を押しつけなかったのがロシアであったらしい。

 本書に登場する日本人とロシア人達の姿を見ると、もし江戸幕府の開国がロシアからスタートしていたら、その後の幕末史と昭和史は、もっと穏やかな時代だったかも知れない…などという幻想を抱きたくなってしまう。
 本書を始め、当時の時代について書かれた書物を何冊か読むに当たり、日本人とロシア人は、いつの日かイデオロギー的対立を乗り越え、心の底から笑い会える仲になる日が来るのではないかと思っちゃうね。

黒船前夜/渡辺京二
日本俘虜実記(上)/ゴロウニン

ベッドサイトの読書灯、ヤマギワ・STEM RAY・SS393N|Conran HIGH-LIGHT

100207-01.jpg ずっと、ふとんの中で読書する事が夢だったのです。

 でも、私の部屋でふとんが敷いてあるエリアは、あまり室内照明も明るくなくて、なおかつ、寝る時に照明を消すには、布団から出て、奥の院脇にあるスイッチ(奥の院とは私の部屋の更に奥にある秘密の部屋を消しに行かなければならない…。となると、せっかくいい感じで眠くなったのに、また目が覚めてしまう…ので、寝る前の読書が、あまり思うように出来なかったのでした。

 いっそのこと、部屋の照明をリモコン化しようかな…なんて思っていたのですが、そんな中、色々とインテリア照明を探していたら、私の琴線にビビッとキタのがこのランプ。ヤマギワから発売されている「STEM RAY」というシリーズ、「Conran HIGH-LIGHT」ともいうようです。その新型モデルでは、サンヨーのエネループ単三を2本入れる充電式となっており、ますます物欲が…。ということで、シリーズの中で「集光レンズ付き」という、オリジナルよりも若干照射範囲が広がっているSS393Nをゲットしてきました。

 早速寝る前に使っているのですが、なかなかいいですね!ふとんの中での読書っていうのは…。
 今まではホテルに泊まったとき位しか「おふとん読書」ってした事なかったのですが、これからは、ちょっと眠れない夜でも、気軽にその時間を読書にあてる事が出来ます。

 更にこのライト、充電式の為、電源のないところにでもサクッと移動させる事が出来て、とても便利です。ライトのアーム部分は、フレキシブルに曲がりますので、自分のお好みの場所を明るくする事が出来ます。ダイキャスト製のテトラ風台座は、適度な重量感があり、安定性も抜群!見た目もカッコいいしね。

 ちょっと無理して難点を上げてみると、内蔵エネループ電池を取り外すとき、ドライバで台座裏側にある+ネジを3本外さないと電池蓋が開きません。急に電池が切れた時など、気軽に電池交換が出来ないのが残念。もっとも、電源アダプタつないで充電していればいいのですが、マニュアルによると、本体でフル充電するには約6時間かかるとの事なので、急に電池が切れて、なおかつ電源がないところで使いたいときは、ちょっと面倒かもね。それと、この製品にはエコポイントとか付かないんですかね。総務省さん。

OLYMPUS E-410 + Zuiko Digital 50mm F2.0 Macro

▼2010年02月06日

海と非農業民

 数年前に亡くなられた、網野喜彦についての評論集。網野喜彦に関わった人達が色々な文章を寄せている…という構成だが、逆にそのような論文をまとめたモノの故に、網野学の入門としてもとても判りやすくなっている。

 網野氏が、どんなプロセスで「常民」という定義を始めて、それを「百姓は農民ではない」という有名な思想に昇華してゆくのか…。本書を読んだだけでは、当然まだまだ情報量が不足しているが、網野氏のどんな著作から読み始めてゆけばいいのか…という指標にはなると思う。

 最後の章「日本の歴史をよみなおす」の英訳版を作るに当たり、百姓を「peasant」と訳すのを禁止した…というのも面白い。代わりに使われた言葉は村民・町民を表す「villager」という言葉だそうだ。

 本書には「第1回常民文化研究講座」の際に行われた網野氏の講演を収録したCDが付属している。そっちはまだ聞いてないです(笑)

海と非農業民―網野善彦の学問的軌跡をたどる/神奈川大学日本常民文化研究所

湿原のアラブ人/ウィルフレッド・セシジャー

 アラブ人と湿原…というキーワードは、あまり結びつかないように感じるのではないだろうか…。私も書店でこの本のタイトルを読んだ時「あれ?」と思ったものだ。

 かつて、人類文明誕生の地と言われた、チグリス・ユーフラテス川に挟まれた下流は、広大な大湿原地帯だった。本書は、そのその大湿原地帯を訪れ、一緒に現地人と生活を共にしたイギリス人による、1960年代に書かれた記録。
 そのイラク地方にある広大な湿原地帯の旅行記を読んでいると、なにやらこの旅行記が、地球以外の架空の世界の話に思えてしまう。

 その貧しくも豊かで、時に生きる事に真剣であったその「アマダン」と呼ばれる部族と、彼等が住んでいた湿地帯は、現在この地球上に存在しない。何故なら、フセイン政権時代のゲリラ掃討プロジェクトで、川の水を人工的にせき止めてしまい、広大な湿地帯を全てを干上がらせてしまうという暴挙に出たからだ。

 旅行記としても大変面白いし、また、世界にはこういう場所も存在したんだ…という記録としても、貴重な資料だと思う。

湿原のアラブ人/Wilfred Thesiger

▼2010年02月05日

コンテナ物語/マルク・レビンソン

 現在世界中で当たり前のように行われているコンテナ輸送。そのアイディアはとあるトラック運転手出身のマルコム・マクリーンが企画し成功させたシステム。そのコンテナ輸送前夜のアメリカ海運業界と、コンテナ輸送によって、世界の海運…流通が変わってゆく様を追った本。

 考えてみれば、日々の暮らしを支えている重要な「コンテナ」というシステムについての歴史をまとめてある本は少なかったと思う。

 私たちの荷物が盗難にも遭わず、無事に世界中を駆け巡ることができるのは、この「コンテナ」というシステムのおかげなんだよね。流通の効率化についてもそうだが、荷物が途中で盗難に遭わない…というのも、コンテナ輸送の優れたポイント。

 タイトルを見ると、やや堅い内容にも思えるが、読み物としても、ドラマチックにポイントがまとめられているので、とても読みやすい。
 そして、こういう普段は地味な縁の下の力持ち系の情報をまとめた本って、理由はよくわからないけど、読むとなんだかワクワクしてくる。お勧め。

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