戦争の世界史/W.マクニール
戦争について、古代から現代(本書は冷戦が終了していない時点で書かれた)までをまとめた本。ただ、一般の戦記書と違うのは「戦争」という事象を、その当時の社会システムや技術から生み出され、変化してきた…という視点で一貫していて描いていること。
例えば、古代における社会システムと、青銅器や鉄器などの発明から引き起こされた戦争の姿、また、その後の中国社会、そしてヨーロッパにおける戦争ビジネス、そして新たな科学力が引き起こした戦争の変化、国家総動員制、単一の国家でコントロールできなくなりつつある戦争、そして凶悪な核兵器を持った現代では、地球規模の強力な国家単位が生まれないと、もはやこの状態をコントロールすることは不可能である…という結び。
ざっと書いてしまうと当然の事の羅列にも思えるが、その中で書かれているエピソードは、どれも戦史マニアをうならせるモノであり、また、個々の時代ごとにおける「戦争」が、1つの流れとして、自身の中で再構築できるような構成になっている。これは読んでいて非常に快感だった。
後書きにもあるが、何故幕末の日本では最新の洋式大砲に歯が立たなかったのか。そして何故西国の有力藩はこぞって「反射炉」を作ったのか…なども、本書を読むとなるほどと理解できる。
また、人力や馬で遠征可能な範囲が、かつての国家において軍事的に影響力を及ぼせる範囲であったのが、様々な技術革新により、その影響力をどんどんと広げてゆくことが可能となり、ナポレオン時代以降の西欧は、もはや戦争によって歴史が作られたというより、新しい技術により戦争と歴史が作られたと考えた方がいいような状況だとも…。
ちなみに、戦争によって「最新技術」が生み出されるようになったのは、十九世紀末の海軍における造艦テクノロジー競争以降だというのは、なにやら意外。それ以前の大砲や銃などのテクノロジーは、全て民間の企業が、開発済みの最新技術を国家に提供していた状態だったそうだ。
他にも細かいことを書いていればキリがないのだが、とにかく、軍事マニアや戦史マニアにとって、本書はやや高価ではあるが、絶対にお薦めの本だと断言する。
私もとりあえず1度読み終えたが、まだまだ全然理解が足りない。机の近くにおいて、事があれば、何度も読み返そうと思っている。