友達で、ブロンプトンの購入を検討している人がいるらしいので、ダメ押しのエントリを書いてみる。ついでに、雑誌などでよく言われているブロンプトンの特性や欠点についても誤解が多いと感じるので、ザックリとまとめてみよう。
ブロンプトンという自転車は、イギリスでは『The Brompton』と定冠詞付きで呼ばれる存在らしい。アンドリュー・リッチーというエンジニアにより、1986年から生産が開始されている。ちなみにこのブロンプトン我がNaim Audioの総裁、ジュリアン・ベイカーが若き日に出資したとか何とか…そんな話もあり、かつてはNaimAudioとBromptonのダブルネームを持った商品が売られていたが、真偽の程は定かではない。とにかく、生産当初から基本設計が殆ど変わらず、今日まで生産されている。
その特徴は、とにかく小さくコンパクトに折りたためること。更にサイズ的に小さいだけでなく、実用面でのコンパクトさを兼ね備えているのが魅力。具体的に言うと、折り畳みサイズから出っ張っている部品が殆どない上に、自立して、持ち上げてもバラけない等…。更にオプションのリアキャリアを装着すれば、転がして移動させることも可能だ。
更に走行性能についてもなかなかのもの。雑誌などでは紹介する商品同士比較と差別化を行わなければならない都合で「走りは今一歩」などと書かれることが多いが、そういう人たちは、おそらく実車に乗ったことがないのでしょう。
長いホイールベースのおかげで、走行安定性は極めてよく、この手のミニベロでは珍しく手放し運転も可能(やらないでね)。そしてその走りについては、スポーツ性というより長距離のツーリング指向において性能がいい。とにかく長い距離乗っていても全然疲れない。もちろんミニベロなので、坂道や向かい風は苦手という面もあるが、私の場合は1日で100km位は普通に乗車できてしまう。しかもロードレーサーで100km走ると「あぁ…走ったな」という気分になるが、ブロンプトンの場合は「え?もう100kmなのか」という感じ。
この辺の適度にゆるくて快適な感覚は、ローバーミニに乗ったことがある人なら判ると思う。あのクルマも自動車雑誌に「長距離走行は苦手」とか書いてあるが、とんでもない誤解で、やはりマトモに使ったことがない人が記事を書いていたのだろうね。若い頃ミニで長距離ドライブとか出かけたけど、友達にもミニの後部座席は特に快適だと評判が高かった。
とまぁ…そんなブロンプトンの概略を書いてみた上で、実際ブロンプトンの購入を検討している人に、注意というかポイントをまとめてみたいと思う。
1:販売店について
まずはブロンプトンを購入するお店について…。私的にはどこでもいいと思う。よく「うちは納車整備にお金をかけてます、全部パーツバラしてグリスアップしています」というお店があったりするが、ま、そういう納車前整備が必要だと思うならそういう店で買うといい。ちなみに私は、日本で一番ブロンプトンを売っているという和田サイクルで購入したのだが、ハッキリいって箱出しそのままで、簡単なチェックを受けただけ。つか、ブロンプトンという自転車は、正真正銘ハンドメイドな訳で、一般工業製品とはちょっと違う。各パーツは最低限調整済みで出荷されていると考えていいだろう。もちろん不良はあるだろうけど、信頼できるお店ならそのようなトラブルには対応してくれるだろうし、どこで買っても問題ないと思う。個人的には一度きちんとくみ上げた製品をバラして整備する方が不安な気もするけど、考え方次第かね。私が納車後に自分でちょっと調整した部分は、若干ホイールのブレ取りをした位だ。
2:ブロンプトンを転がしたい
雑誌などでは、ブロンプトンの売りとして「折りたたんで転がせる」と書いてある記事が多いが、ハッキリいって純正のままでは転がせないと思っていい。ブロンプトンを快適に転がして移動させるためには、リアキャリアと、オプションのホイールが必要。詳しくはこのエントリをどうぞ。私も確認していないが、今年より、リアキャリア付きのモデルがラインナップから外されたらしいので、となると別途購入するしかないのかな。ちなみに、取り付けは自分でもできなくないけど、かなり面倒なのでお店に頼んだ方がいいです。
3:キャリアブロックを装着してない男の人って…
詳しくはこちらのエントリ参照。このキャリアシステムこそが、ブロンプトンの魅力を引き立てていると言っても過言ではない。多くのスポーツ自転車が、荷物の運搬に色々悩む中、ブロンプトンの場合は純正でこんなに素晴らしい仕掛けを持っている。参照先のエントリでも書いたが、すごいのはこんなフロントバッグを装着したままでなんの干渉もなく折りたためる上に、更にそのバッグの持ち手を引いて本体を転がせてしまうという事。自分でザックなどを背負う必要もなく、かなりの荷物を携行できる。これはもっと宣伝してもいいポイントだと思う。
4:持つべき工具
基本的に予期されるトラブルはパンクだ。予備チューブはもちろん、タイヤレバーと、必ず15mmのスパナを持つこと。というか、これがないとホイールが外せない。個人的にはこちらのようなげんこつスパナが便利で、私も必ず携行している。空気入れについては上級のチタンモデルを買わない限りは、純正でリア三角にゼファール製のポンプが装着されている。使いやすいポンプではないが、応急処置としてはこれで充分だろう。
雑誌などでは「折り畳み自転車の場合はパンクしてもそのまま畳んで電車やバスで帰ればいい」なんて書いてあったりするが、都合よく近くに駅やバス停がある訳でもないので、パンク修理はマスターしておいた方がいい。特に後輪の取り外しは複雑なので、何度も練習しておこう。あと、小径車特有で仕方ないことなのだが、タイヤをホイールから外すのに、慣れないうちは苦労すると思う。片方のビードをきちんとホイール中央に持ってきて…という基本を踏まえればできないことはないので、これも練習しておいた方がいい。ちなみに予備チューブの収納箇所だけど、こんな場所にも収納できます(笑)。
5:輪行したい
ブロンプトンを購入したら、やはり輪行したくなるのが人情。ただし、当然だけど輪行というのはそれなりに体力も必要になる。
ブロンプトンに限らないのだが、やはり自分が持つ荷物以外に、10kg前後の荷物を持ち歩かなければならない訳だし、ブロンプトンの場合は転がして移動できるとはいえ、駅には段差も階段もある。比較的持ちやすい形状をしているブロンプトンといえども、それなりに大変である事には変わりない事は覚えておいた方がいい。ましてや、混んでいる電車に持ち込むなんて言語道断。
それを踏まえて、輪行に便利なコツを書いてみると、まず、必ず必要な輪行袋だが、私は使っていないけど、秀山荘から販売されているカバーが便利ではないかと思う。
ちなみに自分は、純正のカバー&サドルバッグという製品を使用。このサドルバッグは、カバーを入れても少し余裕があるため、ワイヤーキーなども一緒に入れて使っている。カバーサドルバッグを使う場合は、こちらのページで紹介されている肩掛けのストラップを用意すると便利。というか、この手のストラップは登山用品店に行けば売っているので、各自工夫すべし。ちなみに私はカメラの三脚を持ち歩く為のストラップを併用している。
長距離ならヨコハマのグリーンスタイルで売っている、ロールキャリングバッグという製品も便利そうだけど、チと高価か。
転がせる…というイメージの強いブロンプトンだけど、実際に駅構内や電車で持ち歩く場合は、転がすより肩から下げて持ち歩いてしまった方が便利なシーンが多いことも覚えておいた方がいいだろう。
6:ブレーキシューはアルテグラに
ブレーキ本体については大分改良されているブロンプトンだが、私が買った年度のモデルでは、シューが明らかに安物で、効きが悪い上に猛烈な騒音を出した。その為シューだけをシマノのアルテグラに変えている。変更後、ブレーキに対する不満はほとんどなくなった。今のモデルではどうなっているのか知らないが、こちらは納車後真っ先に手を加えるべき部分かもしれない。
7:その他オプション
ま、この先は使いながら考えればいいのだが、他にあると便利なオプションとして、加茂屋から発売されているフィンガークランプ。これは本当に便利なので、予算に余裕がある方、折り畳み回数が多い方には是非お勧め。
駐輪時にはリアを折りたたむブロンプトンではあるが、やはりサイドスタンドはあると便利なので、サイクルハウスしぶやで売られているブロンプトン用サイドスタンドはいい選択。
ストレートハンドルを選択した人には関係ないが、オレンジジュースというショップで売られているローハイトハンドルも、状況によってはお勧め。
サドルやグリップはお好みで色々ありますので、ご自由にどうぞ。最近のモデルではアダプタ無しでスポーツ自転車用サドルが取り付けられるようになっています。
他、必ず必要なアイテムではないけど、サイクルメーターはやはり欲しいところ。折り畳みに干渉するため、無線式しか選べないと思うけど、CATEYEシリーズのメーターならきちんと動作する。ちなみにちょっとした注意だけど、サイクルメーターを取り付けてハンドルを折りたたむ時は注意。キャットアイだと、たまにメーターとフレームが当たってしまい、その為メーターの固定ラッチがリリース状態になってしまうことがある。それに気づかず走り始めたおかげで、私は既にサイクルメーターを3回はなくしている。幸い中古自転車用品でおなじみのサイクリーで、ヘッドだけ買い足して済ましているのだが、やはり自分の走行距離を記したメーターがなくなってしまうのは、悲しいことなので(笑)。
最後になったが、ワイヤーチェーンについては絶対に用意すべきで、更に、自転車を離れる時は、ポールなど動かないものにしっかりと固定しておく事。この自転車は一見高価に見えないので安心だという意見もあるが、知っている人ならそのまま自動車のトランクに積んで持ち去ることも可能なので、一般的なタイヤをロックするだけの鍵では不安だろう。私はサイクルショップYのオリジナルワイヤー錠を使っているが、あまり細い錠はやめた方がいいと思う。この辺は持ち歩きやすさと頑丈さのバランスを考えて。
かなり長いエントリになったけど、その他のネタについては、このブログ内を「Brompton」や「ブロンプトン」で検索してみて下さい。日々の工夫やブロンプトンとの暮らし、気になること不満なことなど、それなりに書いているつもりです。
私の場合は、ブロンプトンと暮らす毎日(という程毎日乗ってはいないが)が、楽しくて仕方ないです。長距離ツーリングの他、輪行や、近所の買い物、カフェでは折りたたんで一緒に休憩など、いわゆる「スポーツ自転車」以上の楽しみ方ができる、とても楽しい生活用品と言ってもいいでしょう。
OUMPUS E-410