世界全戦争史/松村 劭
本屋で見つけた時は、その厚さに「なんかのギャグかよ」と思ったのだが、手にとって読んでみるとその内容に引き込まれた。
A5版で2664ページ、古代から去年まで、世界で起きた戦争についての概略を延々と語っている本。ただし、その切り口は、単なる歴史絵巻ではなく、今と未来に通じる力強い主張を感じる、質の高い思想書とも読める。著者の松村 劭については、「ナポレオン戦争全史」という本を以前読んだことがあるのだが、日本人が書く戦争に関する本の多くが、ある種感情的な通念から抜けきらない主張が多いのに対し(通念を否定する訳ではない。ただ、ごちゃ混ぜになっているのが多い気がする)、事実とその論考が割とすっきりと清々しい印象があった…と記憶している。
ただ、その後「戦術と指揮」という本を読んだ時は、ちょっと違うかな…みたいな印象があったのだが。
もちろん、こんなボリウムの本を、一気に初めから最後まで読むつもりはない。机の脇に置いてチビチビと楽しんでいくつもり。ちなみみ松村 劭氏については、ちょうど一年前の2010年1月、鬼籍に入られたとのこと。アマゾンのレビューでもあったが、こんなボリウムでこんなページ数という無茶ぶりは、生前に発刊を急いだ結果なのかもしれない。この荒っぽい編集業も、ある種いい味を出していると思う。
ちょっと高価かもしれないが、歴史で起きた戦争を俯瞰するベーシックな資料として、戦争や歴史に興味がある人は、本棚に入れておくといいかもしれない。