最近、奥の院深部へのルートが確保されたので、本に埋まって姿が見えなかった、往年のイギリス製小型スピーカー、セレッションSL6siを発掘。久しぶりにメインシステムに接続して聴いてみることにした。
このSL6siというスピーカーは、私がまだ学生でアルバイトをしていた頃に買ったもの。一説によると、既に愛用していたAudioLab 8000Aという同じくイギリス製のプリメインアンプが、このSL6を使い音決めをしたとのことで、当時の私は、実際に試聴する前から既にこの製品を買おうと決めていたものだ。
買値は専用スタンド込みで15 万円強だった。早速家に帰って鳴らしてみたら、今までの大型フロア型スピーカー以上に雄大で、それでいて反応の良いサウンドを奏でてくれたと記憶している。
このSL6Si、さすが変態イギリス人が作るだけあって、小型スピーカーながら、システムが全く小型にならないのが特徴。
そもそも能率が異常に低く、当時の中堅国産アンプを使用してもスカスカな音しか出なかった。その為、リファレンス機器に国産機を使う事が多かった当時のオーディオ雑誌では「やや暗い音」とか「柔らかい聴き疲れしない音」などと、誉めているのか貶しているのかよくわからん評価が多かったようである。
また、セッティングの指示も革新的で、当時このサイズのスピーカーは「ブックシェルフ型」と呼ばれ、本棚などの隙間に詰め込むように設置して、不足する低音を壁などのバッフル効果で稼ぐといった前提の設計が多かったのだが、このSL6は、鉄製のSPスタンドをメーカーで用意し、スパイクで床と設置させて壁からなるべく離してのセッティングを推奨していた。余分な反響音や付帯音を排除して、サイズ的に不足する低音は、SP全体の感度を下げ、ウーハーのストローク量で稼ぐという考え方だ。
ちなみに当時のARも「エア・サスペンション方式」という方式で小型密閉型スピーカーで従来のサイズからは考えられない低音を実現させていたりして、小型ブックシェルフスピーカーの世界では革新が始まりつつある時代だった。
とにかく、メーカーが推奨するセッティング方法と、マトモにドライブできるアンプ類を揃えようとすると、大型フロアスピーカー並みに金とスペースを食う小型スピーカーだったようである。
上記では値段をさらっと流したが、私がこのSL6siを買った頃は、こんなサイズのスピーカーに15万とか頭おかしいんじゃねーと言われかねない時代。実際友人からは「小さい割に高価でやっぱり輸入品は割高だね、国産ならもっと大きなウーハーの付いた…」などというありがたいコメントを頂いたものだ。
とまぁ、思い出話はさておき、私が購入してもう20年以上、更に最後にならしてからほぼ10年近い歳月が流れているSL6si、果たしてきちんと鳴ってくれるのだろうか?と思って音出しをしてみると、とりあえず音はバッチリ。故障はしていないようでまず安心した。
改めて音を聴いてみると、まず驚くのがその雄大な音場。目を閉じていれば、絶対に大型フロアスピーカーが鳴っていると思うだろう。
それと面白いというか特徴的なのが、ツィーターの存在がキレイに隠れていること。これは「高音が出ない」という事ではなく、なんというか、ウーハーとツィーターのつながりが絶妙で「今ツィーターが鳴ってるな?」みたいな感じがまるでしないことだ。音の出始めは「あれ?ツィーター死んでるか?」と一瞬思ったくらいだ。
鳴らし切るのは難しいと言われるが、さすがNAP250のパワーにはとりあえず従順にしているようで、以前の英国プリメインで聴いていた感想とも少し違った鳴り方をしている。とにかく色々な場所で言われることだが、サイズの小ささを全く感じさせず、音の低位もズバズバと決まり、たっぷりとした低音が出る、魔法のようなスピーカーだ。さすがに現代のソリッドな製品達と比べると、エッジのタチはやや緩い部分もあるかもしれないが、それでも音の存在感は抜群である。
また、当時のメディアに書かれていた、あるいは自分も少し感じていた「少し暗目の音」という表現も当てはまらなかった。やはりアンプにコストが掛かるというか、アンプのパワーをごくごく飲み込むような印象である。
では、普段メインにしているEXL-1とはどう違うのか?と聴かれれば、EXL-1の方は、あれはあれでサイズとは違ったスケール感を出すスピーカーではあるが、このSL6siのように「まるで大型スピーカーのような」音を出すモデルではない。それと、もう少しツィーターというか高域側がソリッドな印象がある。あと、セッティングがより難しいですハイ。
スピーカーの存在感も、まるで自身が拡大するように消えるSL6siと、その場で透明人間のように消えたがるようなEXL-1という差もある。どちらが良いというものでもないのだが、やはり自分にはEXL-1なんだろうなと感じている。
とは言いつつも今日のSL6siは、午前中10:00頃に出してきて鳴らし始めたばかりである(エントリを書いている今はその当日16:45分)。しばらく鳴らしていけば、もっと違った魅力を発見できるかもしれない。
また、本製品について面白い関連ページを見つけたので、ついでにリンクを貼っておく。
「audio identity 」Archive for category Celestion
最後に、本製品に興味を持った人へ向け、バイヤーズガイド的なアドバイスを少々。
色々と書いてきたが、セレッションSL6siは、海外製スピーカーとしては当時比較的売れた方であり、逆に言えばこの製品以降、日本製のスピーカーは没落し始める。そのせいか中古市場でも比較的流通しているようで、値段も手頃。安くて3万円前後、オーディオ専門店でチェック済みの製品になると、およそ5〜6万前後で売られているようだ。
その際チェックしたいのが、専用スタンドの有無。別に絶対に専用である必要は無いが、やはりスピーカースタンドの使用は必須と考えたい。逆に本棚に押し込んだり、棚の上に直接置いて使う用途には適していないので、その場合には別な製品を選択したほうがいい。
それと、上でも書いたが、アンプには金がかかるようだ。自分もそんなに数多く試した訳ではないのだが、手持ちや友達の主に国産アンプを使って鳴らしてみても、イマイチピンとこなかった。また、NAIT2ではかなり楽しく鳴っていた気がするが、本日NAP250で鳴らしてみると、やはりあれでもまだ少し不十分だったんだな、と実感している。
バッフルを固定しているねじのサビはあまり気にしなくても大丈夫。前面のバッフルはアルミなので、全体が錆び付く心配はない。
手持ちのモデルはエッジの劣化などは見られないが、中古ショップの在庫品にはかなり劣化が進行しているモノも多い。見た目で判断できなくても、ウーハーがバッフルに対してきちんとまっすぐ、周囲の縁も等間隔になっているかをチェックしよう。
ツィーターもドーム型で出っ張っている為か、比較的つぶれたりしている場合も多い。修理はもう不可能だそうなので、直したければ部品が生きているジャンク品を漁るしかない。
今も営業しているセレッションというメーカーは、既にイギリス資本を離れ、中国系のメーカーとなっているため、過去の製品メンテナンスに、あまり積極的ではないようだ。
OLYMPYS XZ-1