モノが語る日本対外交易史/シャルロッテ・フォン・ヴェアシア
7〜16世紀、日本国号が成立した頃から戦国時代前位までの日本の交易史を語っている本。政治的側面からではなく、主にモノを中心に語っているのが普通の歴史書とちょっと違う所。今をときめく藤原書店から発行されている。
日本における大雑把な対外交易を記すと、八世紀までの日本は外国の知識や技術の導入が中心。その後十二世紀までは唐物の輸入、十二世紀以降は中国銭の膨大な輸入に切り替わり、十四世紀以降は逆に日本からの輸出品が増大している…そうだ。
この品目は、日本国の国家成長とぴったりリンクしているのが面白い。特に八世紀頃の日本は、まだまともな中央政府が存在せず、その行政システムを中国に学んでいたことが多かったからね。
その後、唐の工芸品が珍重される時代になり、その時代は割とすぐに去った後、今度は通貨輸入という、今の日本同様原材料を海外に求める政策に変わる。その後は日本の優れた工芸品が中国や朝鮮で盛んに求められるようになった。昔から日本は物作り国家だったんだな〜と。
例えば日本刀は、工芸品はもちろんのこと、いわゆる[数打ち」と呼ばれる日本国内では大量生産品扱いされるような製品でも、中国ではかなり高額で売れたらしい。その他、扇子というのは日本人の発明で、時の皇帝がその日本の扇子を臣下に賜るようになってから価値が上昇し、更にその扇子はシルクロードを通りヨーロッパにもたらされたという。日本人としてはなかなかロマンを書き立てられる話だ。
当時の貿易について、中国(明)と朝鮮は、政府主導の貿易コントロール、日本はむしろ政府が主導しないやりかたで貿易が進められていたというのも面白い。そのため当時の日本人は、勘合貿易(学校で習ったよね)で決められた量を無視して、盛んに中国に物資を輸出しようとしたし、また中国側も、そういった日本の姿勢を無視することもできず、国家の予算を圧迫しながら交易を続けたようだ。
こういった中国の姿勢は、日本を思いやったというより、当時まだ朝貢貿易思想が強かった中国側の都合らしい。つまり、はるばる皇帝の徳に感服して朝貢してきた周辺諸国を無下に扱えば、皇帝を中心とした中華思想の秩序にも悪影響がおきるという考え方。
一風変わった歴史観を得る助けとして、なかなか面白いのではないでしょうか。