電撃戦・グデーリアン回想録(下)
以前購入した上巻に続き下巻も購入。グデーリアンにとって上り調子であった上巻と違い、下巻はドイツの敗戦に伴う記述になるので、展開はちょっと重め。一度罷免されたブリッツクリークの創始者が、ヒトラーの取り巻き達により、無謀に展開を広げすぎた東部戦線の後始末に翻弄する姿は、なんだか悲しくなってくる。
その中で興味深いのが、ヒトラーとの直接やり取りの記述でしょうか。もちろん、近代の軍事的知識に欠けるヒトラーに対して、グデーリアンの進言はことごとく取り下げられるのだが、それでも彼がヒトラーに対してアレだけハッキリと物を言い、またヒトラーもうざったいと思いながらも、彼の任務を解こうとしない(最終的には無理矢理休暇を取らされるのだが、それがグデーリアンにとって幸いした)その姿は、ヒトラーという人物に対する研究資料としても興味深いのではないか。
グデーリアンのヒトラーに対する記述を見る限り、彼はスターリンや毛沢東ほどの独裁絶対主義者でもなかったようにも思えた。
また、晩年のヒトラーが狂っていく様は、彼自身の性格にも起因するとは言え、過度な薬物摂取による精神障害などにも要因はあるのではないかと、割と冷静な分析をしているのも面白い。
このあたり、絶対権力者に対する薬物汚染の関係は、ヒトラー以外でももっと研究されるべきなのかなと思う。
下巻の終わり1/3は付録に費やされていて、ドイツ軍団長や師団長の名前リストなど、ガチの戦史研究者にとっても貴重な資料。そこまでではなくても、各戦局における作戦地図は、本文を読み進めるにあたり、大変役立つ資料である。
戦史としても楽しめ、また、近代陸軍運用思想の祖である個人の回想録として貴重な一次資料である。とてもエキサイティングな本であった。戦史に興味がある方には、広くおすすめしたい。