風の中のマリア/百田尚樹
ヴェスパ・マンダリア、いわゆる、オオスズメバチが主人公の小説。
ハチが主人公のお話しといえば、みなしごハッチなどが思い出されるが、そういう牧歌的な物語ではなく、主人公であり、ワーカーでもある「マリア」は、その生涯を戦いに明け暮れ、自らの運命に疑問を持たないリアリストでもある。
あまり書くとネタバレになるので内容には触れないが、とにかく面白く、一気に読んでしまった。ちなみに帯にある養老孟司先生の解説では
「ワーカーは、現代で働く女性のように。女王ハチは仕事と子育てに追われる母のように。この物語は「たかがハチ」と切り捨てられない何かを持っている。
とありますが、正直何を言っているのかわかりません。物語は徹底してリアリストとして生きる主人公の生涯を追ってゆき、その壮絶な生き様は、男性論とか女性論とか、ンな陳腐なものではなく、読む者に生きる事への意味をストレートに問いかけてくるような気がして、読後感が清々しく、また命についてもマジマジと考えさせられる傑作であった。
虫嫌いで更に想像力豊かだったりする人にとっては、ちょっとエグい描写があるかもしれないが、本当にお勧め。1〜2時間でサクッと読める分量なので、通勤時のお供にもどうぞ。
OLYMPYS E-3 + Zuiko Digital 14-54mm F2.8-3.5
風の中のマリア(講談社文庫)/百田尚樹