日本の家電って本当に高性能なのだろうか
主に黒物家電の話になる。
近頃ニュースやメディアで、よく「にっぽんのものづくり」とか「高性能な日本の家電」という見出しが躍っているが、日本の家電は本当に高性能だったか?と振り返ると共に、今の日本製電化製品は本当に優秀か?と私は思っている。
例えば、日本家電躍進の話で必ず出てくるSONYのWALKMAN。確かにあのアイディアは素晴らしいし、その後の「小さくて高性能」な日本家電のイメージにも大いに貢献しただろうと思う。その前のトランジスタラジオについては何ともいえないのだが、とにかく「音楽を持ち出せる」という新しいスタイル、私達を解放するイメージは、私もすっかり参ってしまい、歴代のWALKMANで「高性能」なモデルが出ると聞けば買い換え、「軽い」というモデルが発売されれば買い換えるという事を繰り返していたことがある。やっぱスゲーやMade in Japan!と本気で思っていたものである。
それがすっかりダサくてみっともなくなったのは、iPodというライバルの出現ももちろんだが、私は勝手にソニーが自滅していっただけじゃないの?とも思っている。
F特を無視した奇妙不可解な低音質モデルを「高音質」などと詠ったり、ATRACという意味不明で誰得なコーディックをユーザーに押しつけたり、更に最大の失態は、モデルチェンジされる度に、ユーザーにとって「不便」な製品になっていったという事である。もはや彼等の目線は消費者ではなく、各種権利団体をみながら製品開発をしていたツケであろう。
最近は少しシェアを持ち直しているといわれているウォークマンだが、それ以前に、かつてiPodを持っていたユーザーが、iPhoneにしたりAndroid携帯に変更したというだけで、単体でDAP(digital audio player)を持ち歩いてるユーザーは減っているように見えるのは気のせいだろうか?
他、テレビについても同じような事が言える。というか、あの地デジ…チャンネル変更うざったくないですか?だれもアレを改善しようとしないのが不思議ですらある。「地デジ」という規格そのものの根本的問題点だから仕方ない…といっても、かつての日本の家電メーカーの基準なら、あんな失態は絶対に許していないと思うけどなー。
あと、トドメはB-CASカード問題だろう。著作権保護云々といってはいるが、少なくともあの機能で消費者が不便に感じることはあっても、便利に感じる事は皆無なはずだ。
更に、最近日本の液晶テレビは、海外製品にコスト面で太刀打ちできないといっているが、当たり前だ。訳のわからんカード認証システムと、HDMI出力へのコピープロテクトなんて訳のわからん機能を実装しなければならない訳だからね。これも、消費者を見ずに権利団体の顔色だけを伺って作った結果だろう。
テレビに付随する録画機器についても、もう訳がわからない。録画した番組データをコピーすることも出来ないし、他の機器で再生することも出来ない。つか、機械買い換えたら録画データは基本的に全てパァだ。こんな製品誰も欲しがる訳無いし、つか、DVDレコーダーとかBluerayレコーダーとか一生懸命買い続けている人の意味がわからないレベルだ。これも、消費者を見ず、権利団体の要望ばかりを入れて作った機械の1つ。
他、PC周辺機器などまで含めて語り出すとキリがないので辞めるが、これらの機器、ハッキリいって日本製より、韓国製や中国製を買った方が全然便利なんだよね。一時期DVDプレーヤーは高級国産機を買うよりも、投げ売りの怪しげな中華製を買った方が何でも見られて便利…と言われていた時期があったが、今でも状況は全く変わっていない。
日本製家電は世界を解放する製品だったのに、今世紀に入ってから発売される国産製品は、どれも「世界を狭める」モノばかり。こんなもんばかり作っていて今でも「テレビは日本家電の誇り」とか言っちゃう経営者は、もはや国際的ビジネスマンというより、その辺のユーザーレベルすら判っていない無能ビジネスマンに等しい。
私は、世界の家電がヒットする理由に必ず含まれるキーワードとして「解放」があると思っている。これは黒物だけではなく、白物家電でも同じだ。
洗濯機は寒くて辛い主婦の労働を「解放」したし、テレビとテレビ番組は、狭かった私達の世界を「解放」した。
ビデオデッキはテレビの放送時間に家にいなければいけない不自由を「解放」したし、携帯音楽プレーヤーは、自宅で(しかも近所迷惑にならない時間)しか聴くことができなかった音楽を、いつでも好きな音量で聴けるように「解放」したし、スマートフォンは、自宅でPCに向かわないと出来なかったインターネットをどこでも使えるように「解放」した。
振り返ると、今の日本製家電製品は、何かユーザーに向けて「解放」してくれる機能を実装しているのだろうか。
高性能化・高品質化・高音質化などという抽象的品質は、一般ユーザーにとって興味の対象ではない。みんな、その製品を買うと「何が出来るのか」という具体的な性能を期待しているのである。残念ながら、その期待を受ける対象では無くなりつつある日本製家電製品の未来は、全く持って暗いだろうと感じている。本当に残念なことだ。
以前Twitterにも書いたが、日本の家電メーカーは、体力が残っている今のうちに、自社で作ったテレビや音楽プレーヤーで配信するコンテンツを、共同で作ってしまう事を考えた方がいい。既存の俳優・芸能人が権利まみれだというなら、メーカーにとって有利な条件で契約してくれる芸人や歌手、アーティストを集めればいいだけのことだ。
そうしないと、そう遠くない未来、日本の家電メーカーはテレビ生産や音楽プレーヤー生産から撤退せざるを得ない状況になる。当たり前だ、自社でどんなに高品質、高音質な製品を作っても、そこで再生・連携利用できるコンテンツがない状況なんだから。
コメント
先月、WALKMAN NW-A855を買ってみました。音質だけならiPod nanoを一蹴すると思います。でも、ソフトウェアは滅法使いにくい。私は通勤中にいい音で聴きたいので、苦労してでもWALKMANを使う覚悟ですが、そもそも使うのに覚悟がいるような機器では、勝負にならないですね。
投稿者: T・B・ | 2012年02月12日 15:43
一言で言うと日本の製品って、家電に限らず「つまんない」だよね。
奇異な人、奇異な物を総叩きした結果でしょうね。
投稿者: ハル | 2012年02月12日 17:49
>T・B・さん
新しいフォーマットは、音質・画質では普及しないって、昔から長岡鉄男が言ってたのにねぇ(笑)。
ちなみに、ウォークマンは、耳掛け式の持ってます。割といい感じでしたが、やはり同期が面倒で使わなくなりました。
>ハルさん
一時に比べると、日本の家電は面白くはなってると思いますが、まだまだですね。
日本のメーカーに何故ルンバが作れないのか…みたいな記事を最近Webで読んで、なるほどと思いました。
投稿者: よっち | 2012年02月19日 18:23