22mmの視点
先週Zuiko Digital 11-22mm F2.8-3.5を手にしたので、昨日はそのレンズを片手に都内を少し歩いてみた。一応“シバリ”として、広角側11mm(135版フィルム22mm相当:以下22mmと表記)にズームを固定して風景をスナップする…というテーマである。
人によって色々だと思うが、どれか単焦点レンズを1本選べ…と言われれば、迷わず28mmを選択する私。昔から広角レンズが好きだった。というか、28mmという焦点距離が、私が肉眼でみる世界にとても近いという理由もある。
もちろん、光学的・生物学的な肉眼の視角は誰でも大体一緒だと思うが、これは普段世界をどのように見ているか…という、ある種哲学的問題にも発展することで、これ以上はメンドクサイので止めましょう(笑)、ま、つまり私は広角が好きだって事だ。
昔学生の頃、興味半分で受講した写真のゼミでは、私の写真はいつも講師から「写真としての視点があいまい」とか「撮りたい対象をもっと整理して」みたいなアドバイスを受けていたのだが、そう言われる度に内心私は「そうじゃないんです、もっと周りも撮りたいんです」と心の中で訴えていた。恥ずかしがり屋だったので心の中だけでしたけど…。
思えば、その頃使っていたカメラというのが、懐かしのコニカBIG MINIであり、その焦点距離は35mm。当時はコンパクトカメラにしては広角レンズだということでそれなりに評判になったようだが、私としてはまだまだ画角が足りないといつも思っていたものだ。
その後、働き始めて、クソ忙しくて徹夜とか休日出勤とかしまくった後に買ったカメラが、一眼レフのCANON EOS-620。確かレンズは35-105mmのズームレンズで、その後50mmのマクロレンズを買い足した。その頃は、一眼レフというカメラの性能にすっかり支配されてしまい、画角に関するこだわりや不便感もあまり感じなくなっていた。
で、大分経った後に衝撃を受けたのが、RICOH GRという28mm広角単焦点レンズを持ったコンパクトカメラ。この当時、一眼レフですらズームが当たり前だった時に、広角で単焦点でしかも高価なコンパクトカメラ、というのは画期的であった。今は無き上野の狭いビルにあったヨドバシカメラで実物を見た時には興奮したモノである。
始めて見た衝撃から1〜2年経ってからじゃないかな。ようやくこのGRカメラを手にして、いきなりフィルム消費量が激増した。当時勤めていた会社のすぐ裏に富士フイルムのプロラボがあったという幸運もあったが、とにかくこのカメラでいろいろとつまらない写真を撮りまくった。
いや…これは謙遜じゃなくて本当につまらないのだ。というのも、いつも歩いている道を私が見ているそのままで撮影できるというのがすごく楽しくて、少なくとも作品的写真を作る事には(いまでも)興味が無い私にとって、このレンズは本当にしっくりきていて、今でも“28mm 対角角75度”という世界が私の基準になっている。だから、デジタル時代になってもRICOHのGRシリーズは手放せないのだ。
前置きが長くなったが、この22mm対角角89度というのは、人の目の視点を超えた領域であり、撮影した写真を見ると、現実の世界とは違った像を見せ始める世界。
なんとなく、超広角レンズの世界を甘くみて出かけた撮影だが、肉眼で見た視点とファインダーを通した視界の違和感がぬぐいきれず、カメラを構えた位置が全く遠かったり近すぎたりと、思ったようにうまくいかずやきもきしながら約2時間で200前後の写真を撮ってきた。
さすがに終わり近くなってくると、ある程度慣れてはきたが、なかなかあなどれない焦点距離だなぁと。
ただ、久しぶりに楽しい写真体験ができたので、頑張ってこの焦点距離をもっと使いこなせるようになりたいなーと思う。自らが長年設定した距離感と視点の常識をリセットするには、それなりに時間がかかるだろうけど。
もっとも、この視点に違和感を感じなくなった暁には、7-14mmとか欲しくなっちゃうのかもしれないけどね(笑)。