午前零時の自動車評論/沢村慎太朗
前作「スパーカー誕生」では、とても精緻な分析を読ませてくれた沢村慎太朗氏の評論集。期待ワクワクで買ってみました。
読んでみた結果としては、面白いけどちょっとキバっちゃってるかなぁ…という印象。なんだか文章内で無理にワイルドなキャラを作っている気もするのだが、今時そういった「ちょいワル」的なキャラは少し古いんじゃないだろうか?もっとも、この時勢自動車雑誌を買っている人達に向けての文章は、そういうタッチの方がウケるのかもしれないけど、単行本で読む文章としては少し違和感を感じた。
例えば、トヨタ車の「後席リクライニング」に付いての記述とかね。氏の主張は本当にもっともだと思うし、日本製セダンの多くは、見た目優先の屋根の低さから、後席の居住性を誤魔化すために、かなり寝そべった座角のクルマばかりだった。そもそもリクライニングしようとしまいと、三点式シートベルトではサブマリン現象バリバリなんだろうなぁ…と。ついでに言うと、日本車の後席に坐ってると疲れやすいのもあの角度のせいだろうし。
ただ、ああやってわざわざ激高を煽った形で主張するのは、単行本では逆効果かなと思った。
他、軽トラについての記述も面白かった。無個性と言われながら、エンジンと駆動輪が、各社ともFF/MR/RRと、ここまで個性ありまくりというか無秩序なジャンルは、この日本では珍しいね。本書ではスバルのRR方式に軍配を上げていたようだが(というか消えゆくスバル軽へのオマージュ記事なので仕方ないが)、積載状態だとスバルのRR方式は、前輪が跳ねてばかりで怖いという意見もアリマス。
前作の「スーパーカー誕生」からすると、すこし文体は変わっていますけど、あの本を楽しめた人には、この本も面白いと思いますよ。