幕末外交と開国/加藤祐三
本屋さんで見かけて立ち読み、面白くてすぐにレジへ持って行きました。
本書最大の特徴は、幕末における「開国」という事件を、極めて冷静に分析していること。
この時代の開国話というと、つい「日本はアメリカに恫喝されて開国を強制された」「いやいや…日本は恫喝などされていない、むしろアメリカを利用したのだ」など、あまり冷静な議論が行われていないように見えます。
私が子供の頃などは、何も知らずに天下太平だった江戸時代が、ペリーの蒸気船を見ただけで、日本中がひっくり返ってあわてて明治維新へ向かった、などと教わりましたし、その後の時代劇や幕末マンガなどを見ても、多かれ少なかれ似たような印象です。
と、私達はこの「開国」という事実よりも、「開国にまつわるエピソード」ばかりに振り回されています。
ただ、もう少し冷静にこの幕末外交を考えてみると、当時の血に飢えた西欧諸国に対して、日本の幕府はよくもまぁ…このような困難な仕事を、1発の銃声もなくまとめ上げられたよな、と思わずにはいられません。
結果、条約に不平等な条項は残りましたが、これは、当時の幕府が外交に不慣れであったという結果によるモノで、全体を見回してみると、日本としての国体と威信を売り飛ばさず、砲艦外交を迫ってきたアメリカ(こちらはそのように断言してもいいでしょう)に、よくもまぁ、冷静に対処したものだと思います。
また、私達が「開国」という言葉で想像するペリーの脅迫じみた態度は、明治以降の学校教育によるものだというのも記載されています。
もともと新書で発売されていたようで、そのせいか読みやすく、要点もコンパクトにまとまっていますので、幕末という時代に必要以上のロマンやドラマを求める向き以外なら、とても面白く学べる本だと思います。
また、あの時代の外交はもっときちんと分析し知識とすれば、今の日本の外交にも充分活かせるのではないかと思いました。