偉大なる中庸、LINN MAJIK
LINNの1990年代傑作プリメイン、MAJIKを引っ張り出してみます。
このアンプは、思えば私の「マイ・オーディオライフ・セカンドシーズン」の主力アンプとして長い間君臨していた機種。一般のオーディオ雑誌では、音が渋い、暗い、思ったよりレンジが広くない、プリメインにしては高価(定価25万円+値引き一切無し)…などと、そんなに評判の良い機種ではありませんでした。そもそもこのボリウムノブが一切ないLPジャケットサイズのコンパクトなスタイルは、当時のオーディオマニアの価値観とは正反対のスタイルでしたからね。
私は当時LINNのAXISというアナログプレーヤーを使っていましたので、代理店が変わった(当時ODEXからLINN JAPANへ)タイミングで案内のハガキが来たとき、LINNのプリメインってどういう音するのかな?なんて興味が出て販売店へと聴きに行ったのですが、その場で撃沈。同じく LINNのMIMIKというCDプレーヤーとセットで50万円、衝動買いしてしまった事がありました。
自分の話はこのブログでもたくさん書いているのでこの辺にしておいて、その頃から見始めたNiftySarveのFAVというフォーラムでは、世間のオーディオ雑誌では全く相手にされなかったLINN製品の評価が異常に高く、今まで国産で数十キロの大型アンプを買い込んでいたような人が軒並みLINNに買い換えていましたね。そこでの評価は主に、音が良いという評価よりも「音楽聴くのが止まらなくなった」みたいな評価がとても多かったのを覚えています。
久しぶりに音を出してみると、いわゆる音質評価的な視点だと以外と平凡なんですよね。音のレンジ感も至って普通で、むしろ最近のアンプと比較してしまうとナローに感じる部分もあるかも。それと多分はじめてこのアンプの音を聴く人は「地味」って感じると思うんですよね。何故なら低音が響くとか高音が伸びるとかボーカルが美しく歌うとか、そういう印象がほぼない。
しかし、このアンプのキャラクターを控えめにした一定の節度、制動感ある音は、音楽を聴いているのが本当に心地よくて、音楽聴いたりCD買い込んだりするのが止まらなくなる。私もこのアンプを買ってから数年は、毎月CDを4〜5万円分は買い込んでいたと思います。
こういうアンプを称して、オーディオマニアの人達はよく「何も足さない音」とか「原音をそのまま出す」といった言い方をしますが、Majikの音はそういうのとも違って、音の無駄な虚飾を取り去っている印象。
そして、なによりもこのアンプの素晴らしいところは、音楽の空間表現の巧みさでしょうか。空間はさほど広い訳でもなく、音響に癖のないライブハウス的大きさ、そしてその中で実に精密な演奏空間を構成します。この音像は大規模なオーケストラを聴く人にとっては少しモノ足りないかもしれませんが、JAZZやPOPS、そしてアニソン(笑)が好きな人にはたまらないです。2つのスピーカーの間にボーカルが正しい人の形をして現れる、そしてそれが世間でいう高音質録音のソース以外でもきちんと現れます。こういうところがLINNの巧さだよなぁとしみじみ思いますね。
派手な録音、地味な音楽、全てMajik流に1度余分な要素を洗い落としてスッキリした形にしてから増幅する。以前2chのLINNスレッドに「LINNスレッド・ふんどし一丁だよもん」という荒らしスレが立ちましたが、だよもんはともかく、ふんどし一丁はこの黒箱時代のLINNを象徴するキーワードとして実にわかりやすいかと。
オーディオファンにとっては少し物足りないかもしれませんが、今でも音楽ファンにとっては、CDなどのソースを買うのが止まらなくなる、実に悪魔的なプリメインアンプです。