Victor AX-Z911
まぁ…色々ありましてねw。某アンプを返品してきたついでにヤケで買ってきたビクターのDAC内蔵アンプ。ヤケというのは嘘で、こっちのアンプもかなり気になってはいたんだけどね。お値段も某アンプの1/5程度だったし。
VictorのAX-Z911、発売は1987年で当時の定価は89,800円。このアンプ、実は昔にヲデヲやってたときから気にはなっていたんだけど、結局あの頃の自分は輸入製品の方に進んだので、長い間縁はありませんでした。ただ…ずっと心のどこかで気になってはいたんですよね。それが、近年の某所でのアンプ道楽遊びの中で、手持ちの中古アンプを増やすことに抵抗感が無くなったということもあり、非ドフ系のリサイクル店から回収。見た目はミント状態で、一応店頭で動作チェックとDC漏れなど確認してきたのですが、スピーカー端子のDC電圧は7mv程度だったので大丈夫かなと。某所に持ち込んで早速音出しをしてみます。
AX-Z911の特徴といえば、何と言ってもDAC内蔵アンプだということ。更に面白いのが、デジタル入力があった場合、それをそのままD/Aコンバータに送るのではなく、1度内蔵メモリにバッファしてから再生するという点。バッファメモリの容量は果たしてどのくらいあるんでしょうかね?
で、なんでこんなめんどくさい事をするのかというと、ズバリ!アンプのA級動作を実現するためとなります。
アンプにおける増幅方式、A級、AB級、B級…についての解説はここでしませんので、興味がある方は適宜ググってほしいのですが、簡単に言うと、A級アンプというのは、アイドル時こそが消費電力最大状態という、頭のネジが外れてるんじゃね?なんていう超非効率な増幅方式。しかし増幅時の信号のクロスオーバー歪みに関する影響を受けないため、音のピュアな増幅が可能となり、一部で熱狂的なファンがいる形式のアンプとなります。
ただし、当然ながらA級アンプはアイドル状態で回路へと全力で電気を送り込む方式ため、電気代はともかくとして、アンプの回路には猛烈な負担をかけます。そりゃそうです、ある意味常に全力疾走で最大出力な状態ですから(むしろ音を出している時の方が電気をスピーカーに食われるため回路への電流は減ります)。なのでそれと引き替えにA級アンプの最大出力は小さいです。このAX-Z911の場合でいうと、A級で最大出力20W、但しもうひとつ内蔵されているAB級回路に切り替えれば最大出力120Wとなります。そして理不尽wなことに、AB級動作ならなんともないアンプの天板が、低出力なA級動作に切り替わるとたんチリチリに熱くなります。つまりはファンが壊れた20W(出力なので実際はその倍以上)の電熱ヒーター回してるようなもんですからね。夏は使えんぞこれ(笑)。
で、話を戻しますが、このアンプが何故デジタル出力を1度バッファするのかというと、なんと!バッファに貯めたデジタル信号をアナログ変換する前に解析して、出力が20W以下で済むと思われる場合はアンプの増幅回路をA級へ、それを越えると予想される場合は、アンプのクリップを防ぐために瞬時にAB級(ここでは解説しませんがつまり効率的に大出力が出せる増幅方式、普通のアンプはこっち)へと回路を切り替えるのです。ハッキリいってアホかいなと思う手の込みようです。というか、こんな方式を採用したオーディオアンプなんて、全世界でもこのAX-Z911(と後継機のAX-Z921)のみだと思います。もっとも、一般家庭で音楽を再生する限りは、アンプの出力20Wなんて越える訳ないと思いますけどね。
ちなみにどうしてこんな面倒な安全弁みたいな仕掛けがあるのかというと、アンプが制限出力を越えると、越えた分の信号の山が平坦…クリップと呼ばれる状態になり、そのときスピーカーには直流電力が流れるのと同じ状態になるからです。何故これがマズいのか…は、ググって下さいw。
故にこのアンプの場合、デジタル入力とアナログ入力では全く音が変わります。そりゃそうです、入力信号によってA級動作とAB級動作に変わる訳ですからね。アンプとしては全く別物な訳で、当然同じ音の筈がありません。
で、このデジタル入力時のA級動作状態の音がすごくいいんですよ〜いやマジで。当然ながらA級動作を行う為には、内蔵のDACを通さなければいけないので、ADI-2 Proからデジタル48kHzを送り込んで聴く訳ですが、この古くさいDACの味もなかなか。
現代のDACと違い、音の滑らかさとか解像感はあまりないのですが、情報が適度に欠損しているせいなのか音に力強さがあり、例えていえばちょっとやれてきたレコードの針で音楽聴いてるような印象。音の正確さとかぴゅあぴゅあな音楽再生みたいな観点だとやや邪道なのかもしれませんが、ヲデオは楽しければよいのです。更にダイレクトモードをONにすれば、余計な回路をすっ飛ばし、アンプ内部配線の長さが0.5mでスピーカー出力端子まで直結されるそうで、一層音の鮮度がアップします。
ADI-2 Proからアップサンプリングしてアナログ出力での再生も試してみたのですが、こちらの方が音は滑らかでちゃんとしてるんだろうな〜と思いつつ、逆にA級アンプのなんとも言えないシルキーな雰囲気が失われます。DACは荒いけど増幅部は滑らかなA級動作か、DACの情報量は多いけど増幅がやや荒いAB級動作か〜悩むところではありますが、やはりこのアンプの個性は貴重なA級動作にあると思われますので、おとなしく内蔵DACで音楽を聴くのが筋かと。
裏技として、外部からデジタル信号を入力した状態で、DAT-2からのアナログ信号を入力し、DATの録音モニター状態で再生するとアナログ入力からのA級動作が可能みたいです。
みたいです…というのも、アンプの表示は確かにA級増幅になってるし、天板もチリチリに熱くなるのですが、なんかデジタルを突っ込んだときのA級動作と音の感じが微妙に違う気がするんだよね。これは私の気のせいかもしれませんので何ともいえません。アンプがこの状態の場合、内部の基板ではランプが点灯してA級増幅中であることを示すそうですが、それがこの写真。ちなみにこのランプは天板戻してしまうと外からは見えません。
デジタル側はリンクさえすれば音楽を再生する必要がありませんので、古いCDPの電源を投入してデジタル接続しとくだけで構いません。ADI-2 Proから同時にデジタル出力するって手もあるのですが、その場合サンプリング周波数の受けは最大48kHzを上限にしないとリンクしませんので、アップサンプリングでの再生はできない事になります。
そういえば本機の天板ですが、呆れることに通常の天板の上に厚さ3mm程度の鉄板が敷かれています。天板空けようとイヤにネジ多いなと思いつつ本機上部のネジを全て外したら、そのまま文字通り天板だけが取れて驚きましたが、まぁ…この時代のアンプは重量こそ正義といわれていた時代なので、さもありなん。
天板を空けたときに気が付いたのですが、本機は多分天板空けられたことない状態。こういうのって自分でバラすと何となく雰囲気でわかるんだよね。ネジ山に全くキズが無いとか、ネジを全て外して天板を持ち上げるときの抵抗とか…もちろん間違っている場合もありますが、新品の家電製品を分解したことがある人なら、何となくその雰囲気わかってもらえるはず。この個体は、外見もミント状態でしたが、中も30年前のアンプにしては非常に綺麗な状態でした。
それと、リモコンが付いてるのがありがたい。ホントか知りませんけど、この手のピュアなオーディオアンプの中で、始めてリモコンを搭載したのが本機だという話。
スピーカーは当初Ditton15で鳴らしていたのですが、イマイチパッとしない印象でした。しかしYAMAHA NS-1cに切り替えたら実にいい塩梅で鳴り、この時代の国産ステレオが目指していた音はこういう方向だったんだなぁ…というのが実感できて、なかなか気持ちよいです。
↑これが天板、厚さ3mm位あって重い!
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