National/Technics SU-50A
どうでもいいけど、乙女のたしなみアンプ道…的なアニメか漫画とかできませんかね?名付けて「ガールズ&アンプリファイヤー!」。萌えっぽい女子高生達が乙女のたしなみを身につけるために、古のアンプを使って闘う…って、何と闘うんだ?w
それはともかく、ここ数ヶ月私が夢中になっているアンプ、TechnicsのSU-50Aです。発売が1969年でステレオサウンドNo.10に発売の案内が出ていますので、同年の春くらいから店頭に並んだのでしょうか?発売当初は50Aというシンプルな型番でしたが、後にSU-50Aと変更されたようです。
当時の定価は95,000円。消費税制度の前にはオーディオ機器に物品税というのが15%程かかっていましたので、それを差し引くと本当の価格は82,600円くらい?更に当時の物価を考えると1969年といえば大卒初任給が平均34,100円の時代。ただ当時の経済は高度成長期の健全なインフレ基調にありましたので、今と比較して数字通りの貨幣価値ではないと思います。それでも今の感覚だと20〜30万円クラスのプリメインアンプと言えますかね。発売当初だと、国産では最高額に近い製品で、当時のオーディオ誌を当たってみても、高級オーディオ機器として扱われています。
このアンプの特徴は、何といっても、ナショナル・テクニクスが始めて発売したソリッドステート、つまり増幅にトランジスタを使った初のプリメインアンプであったということ。その当時のHi-Fiアンプはまだまだ管球式がメインで、ナショナルが同時期に発売していたSU-30/SU40というプリアンプとメインアンプも管球式でした。そんな中での同社初めてのトランジスタ方式によるHi-Fiプリメインアンプということで、本機にかけるナショナルの意気込みもかなりのものだったようです。
こちらは、ステレオサウンドNo.14に掲載されていた折込広告。大きく天板を空けた内部を見せ、その横には「アンプとして魅力があり、音色として親しみがある50A!」というキャッチが掲載されています。
この「音色として親しみがある」というのがポイントで、当時の雑誌記事を当たると、トランジスタ方式ながら音色には暖かみがあり、まるで管球式のアンプのようだ…といった評価が出ていたりします。
これは想像ですが、当時のナショナルは、初のトランジスタアンプとして、音色の違いを管球式と比較されてしまうのを恐れたのかもしれません。そのため本機の音色はTechnicsブランドのアンプとしても異質で、実質の後継機であるSU-3600はもちろんのこと、それ以前に発売されていたSU-30/40という管球式プリアンプ・メインアンプよりも暖かみを感じる音色だったそうです。確かに私達が想像するTechnicsの音って、正確無比で硬質、ウォームよりもクールという印象がありますもんね。
その他、本機の特徴としては、OCL、アウトプットコンデンサレスであるということ。そのため鮮度の高い、特に低域の再現性に優れるそうです。あともうひとつは、特別な回路を使ったトーンコントロール類。これらのつまみはセンター位置から15度以内の範囲で信号がバイパスされる構造になっています。更にトーンコントロールは低域:250Hz/500Hz・高域:2.5kHz/5kHzでそれぞれターンオーバー周波数が切り替えられたり、サブソニックフィルタは-8dbでそれぞれ30Hz/8kHzを選択できるスイッチがあったりと、あの時代のレコード再生を意識した音質コントロール機能も豊富です。ちなみにフォノ回路はMMのみ、ただしこのイコライザ回路も優秀で、名前は忘れましたが、某オーディオ評論家がフォノイコとして本アンプを長年使い続けていたという話をどこかで読みました。
こちらのアンプは、某所で5万円、更にメンテナンス済みという至れり尽くせりの状態で売られていたモノ。メンテログによると、各種レジスタ類が調整・交換されていてそれなりに手は入っているようですが、リキャップはされていないようですね。正弦波と短形派の測定画像も添付されています。スピーカー端子からDC電圧を測定してもほぼ0mvという優秀な状態だったので、しばらくは使い続けられると思います。
早速音を聴いてみると、本当に素晴らしい…素晴らしいというかね、私の好みとしてこの時代の石のアンプが本当に好きなんだなと思いました。
なんだかんだで家のメインシステムもこの時代の石のセパレートアンプですし、この時代のソリッドステートなアンプの音には本当に心惹かれて困ります。ただ、今のところ管球式のアンプに行こうかという気分にもあまりなれないんですよね。なんででしょうか?w
私が思うに、この時代のトランジスタアンプって、音に独特な明るさと歯切れの良さがあるような気がするんですよね。この印象はひょっとしたら、完全に元の音を増幅し切れていないから、あるいは音の情報量が足りないからなのかもしれません。でも、それを言ってしまえば世の中のヴィンテージオーディオ機器なんてみんなそんなもん。音、そして音楽にとって何が重要かは人それぞれで、逆に言えばその人にとって必要ない部分をそぎ取ってしまったからこそ、より音楽が美しく聴こえる…。だからこそ特定の時代のヴィンテージオーディオにハマる人が大勢いるのかもしれません。
ただ、スピーカーの駆動力については現代のアンプに比べ今一歩かなぁ。
ダメというレベルではないのですが、CelestionのSL-6みたいな低能率のスピーカーを鳴らすには、今一歩パワーが欲しい気もします。もっとも、この時代のスピーカーはまだまだ高能率でしたからね、まさか発売後半世紀過ぎて84dbW/mなんて低能率スピーカー駆動させられるとは思ってもみなかったでしょう。ただ、手持ちだとYAMAHA NS-1cについてはそれなりに鳴ります。
なので、私の場合だと、背面のプリアウト出力(本機は背面のプリとパワー端子をショートさせてプリメインとして使う方式、なのでショートピンを外せばプリにもメインにもなります)から、AudioLab8000Pに信号出してスピーカーを駆動しています。その方がこのアンプのおいしいところを味わえますので。
どことなくマッキン風な見た目は、古のオーディオ評論家、瀬川冬樹氏のアドバイスを受けているという話です。発売当初はMacintoshのアンプを真似しているなどと言われたらしいですが、そもそも一番外見が似ていると思われるMcintosh C23もほぼ同時期の発売なので、真似と結論づけるのも難しい感じ。
ただSU-50Aの透過パネルについては、実は広告の写真から想像するよりも高級感がなくて、黒いパネルの中から文字だけが浮かび上がるのではなく、パネルの中身全体がうすらぼんやりと光るという、何とも微妙な代物で、ここはもう少し頑張ってほしかったなと思うところ。
でも、正面にあるナショナルマークとテクニクスマークはカッコイイですね。評論家の菅野沖彦氏は当時のインプレ記事で、このマークがもう少し小さくなればいいのにと語っていますが、今となってはこの英文ナショナルマークもむしろ貴重でカッコよく見えます。
↑暗闇だと結構派手な印象w