Technics SB-F1
今から40年位前、テクニクスより「コンサイスコンポ」という製品が発売されました。ここでいう「コンサイス」とは、コンポーネントの大きさがコンサイス辞典並みにコンパクトなサイズという意味で、実際に辞典並みの大きさなのかは別にして、当時、大型化というか恐竜化する一方だった単品オーディオコンポに一石を投じた製品。宣伝にも力が入っていたようで、当時は小林亜星とすぎやまこういちを起用したテレビCMも放送されていたようです。
面白いのは、当時単品コンポーネントではハイエンドクラスにならないと存在していなかったアンプのセパレートシステムが、割と各社で実現していたことで、スタートになったテクニクスはもちろん、ダイヤトーンも同じようなサイズでセパレートアンプシステムを販売していました。これらはサイズが一般的コンポサイズではなかったので、ユーザーもセットで入手する場合が多く、そのため各コンポーネントとしての役割をそれぞれ明確に設定しやすかったのでしょう。
この小型コンポの流れは、そのまま進めばきっと日本のオーディオも違ったモノになったかもしれません。これらの製品はそのままセット売りのミニコンポへと進化(退化?)してゆききますが、そちらはオーディオの流れとして語る製品ではありません。
そんなコンサイスコンポの中でもキラリと光る製品がこのスピーカーTechnics SB-F1。見た目はミニコンポの付属スピーカーみたいな趣ですが、キャビネットはアルミダイキャスト製でずしりと重く、ユニット配置もテクニクスお得意のリニアフェイズ設計となりとてもHi-Fiな音を出します。ブースト気味にして低域を擬似的に伸ばすミニコンポの付属スピーカーとは全く違う製品でした。
ということで、とりあえず写真のように机の前に配置して音出しをしてみます。経路としてはMacmini→ ADI-2 Pro→NAPOREX HA-5→NAP250となります。スピーカーの脚はTAOCのメタルインシュレーターにAETのVFE-4005Hを重ねています。
まず印象的なのが、音の定位感がすごいってこと。こんないい加減な配置で、更にスピーカーから耳の位置も近い(多分4〜50cmkくらい)なのに、本当に正面iMacモニタの奥からボーカルが聞こえます。というか人が立っている感じの妙にリアルな音場感です。サイズ的に低域は少し不足しているのかもしれませんが、低域がブヨブヨした感じにならず、シュッとした切れが良く量感も感じられる低音です。
そして、音を再生中にキャビネットに触っても、思ったよりも振動していないことがわかります。この制振構造的なキャビネットが、独特の音場感を生み出しているのかもしれません。
当時の販売価格は、古いオーディオではお馴染みのこのサイトによると、¥18,500(1台、1978年頃)だそうで、左右合わせると37,000円となり、そんなに安い製品でもなかったことがわかります。当時のように卓上三脚などを使ってスピーカーをフローティングさせてみるとまた音も違ってくるのかも。
しかし…卓上のこういったニア過ぎるニアフィールドリスニングもなかなか楽しいですね。
↑Technics SL-XP5と一緒に。
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