Cyrus TwoとPSX
もう10年20年前でしょうか…都内の某高級オーディオ店で、状態があまりにもアレなので処分する寸前というCyrus Twoを何かを買ったオマケということもありタダ同然の値段で仕入れてきました。
その状態といえば、見た目がボロボロ(というかこの時代のネクステル塗装の機械はみんなそう)ということと、電源ボタンが死んでいること。電源ボタンについては単にスイッチを動かすプラ製のパーツが折れていただけだったので、基板上でスイッチを直接ONにして電源ケーブルをつないだら音が出ました。
その音は、LINNやNaim等のプリメインと違い、ちょっと乾いた感じの音だったのですが、他の英国製小型アンプ同様、スピーカー駆動力と空間表現は実に素晴らしく、メインシステムとしては使っていませんでしたが、時折取り出しては音を出して、そのブリティッシュサウンドを堪能していました。
このCyrusのアンプには、強化電源のPSXというモデルがあります。
「強化電源」という考え方は、あまり日本のオーディオメーカーだと聞かない商品なのですが、海外製品の場合は割とオーソドックスなアップグレード手段として認知されています。
同じイギリスのメジャー所だと、LINNの場合はアナログプレーヤー用のLINGOという強化電源、Naim Audioの場合だとSNAPSやHi-Capといった強化電源など。もちろん音質向上効果はその価格以上の価値があるのですが、いうなればただの電源、どうもこのジャンルの製品は日本のオーディオメーカーでは定着しなかったようです。
Cyrus Two用の強化電源PSXは、ボディの中身半分を占めるのでは?という巨大なトランスから、DC+36Vと-36V(だったかな?)とグランドを供給して、Crysu Twoを駆動します。
PSXからの電源でCyrus Twoを駆動している場合、Cyrus Two側の電源ケーブルは必要ありません。インレットから電源ケーブルを抜いてしまってもCyrus Twoは動作します。ただ、内蔵フォノイコだけはCyrus Two側の電源から供給されますので、アナログレコードを聴く場合は電源ケーブルを接続する必要があります。逆にいえばPSXから電源を供給されている状態のCyrus Twoは、その内部電源の全てを内蔵フォノイコライザーのみに使う事になりますので、アナログレコード再生において劇的な音質向上効果が得られるようです。一説によると「レコードは腰を抜かすほど音が良くなる」とか。
このPSXは、ジャンク品を数千円で入手したモノ。私が所持しているCyrus Twoとちょうど釣りあうかのごとく、筐体はボロイ感じでむしろ私的には好ましい(笑)。
ジャンク品とのことで当初はCyrus Twoに接続しても音が出なかったのですが、調べると基板上のヒューズが2本切れていました。なのでそちらを交換して再び電源を入れたら、今度はメインヒューズが瞬断。いわゆるヒューズ内の導線が破裂するように切れたという状態で割と重症。どこかで回路がショートしてるのかな?と、テスターでいろいろ追っていくと、トランスからの出力線で一箇所ショートしていまして、それを再接続して電源を投入してしばらくしたら、今度は筐体の一部が千切れて落下し、それが基板上でショートしてまたメインヒューズを飛ばすなんてミスをしてしまいました。なのでそういった事故を防ぐため、筐体上部、穴が開いた部分を内側からアルミ製パンチングメタルで塞いで使っています。
音質はどうなんでしょうね。
最近Cyrus Twoの音を単体で聴いていなかったので、実はあまり良く分からないのですが、以前よりも音がハキハキしてパワーが出ているような気がしますので、おそらく音も向上しているのでしょう。少なくとも現状では、比較のためにCyrus単体で聴いてみるのがが面倒くさいくらいいい音が出ていますので、PXSの効果は出ているんだろうと思います。見た目はかなりボロボロですが、音は実に気持ちが良い。
日本におけるCyrusは、同じくコンパクトな英国製プリメインアンプでも、LINNやNaimに比べてマイナーではありますが、その音の魅力は引けを取るものではありません。他の英国アンプの音が割と湿り気を持ったイメージの中で、Cyrusのこのカラッと乾いたキャラクターを持った音もハマると他に代えがたい音であり、日本でCyrusのファンが少ないことは、ちょっと残念な気がします。