SONY TA-4650
入手したのはもう1年以上前の話なんですけどね。
確かドフのジャンク品で3,000円だったかな?動作確認して一応音が出たし、DC漏れもさほどなかったので確保してきました。
ただ、さすがジャンク品だけあって、いくつかトラブルも。
まずは、ボリウムの部分、このアンプのボリウムノブはちょっと面白くて、同軸でプリセット用のボリウムがあります。メインボリウム奥の部分をひねると、普段使うボリウム位置を設定できて、手前メインボリウムをひねるとその設定した部分でクリック感があり、いつも聴いているボリウム位置を記憶させられるという機能。面白いのですが、実際はクリック位置の前後のボリウム微調整がしにくい。ここが大幅にズレていたので修復しました。まぁ…こんなのは簡単。
もう一つ問題だったのが、通電後に回路が温まってくると、スピーカーからバリバリとノイズが出る。これは…ヘタをすればスピーカー飛ばすので、ちょっと怖くて使用を中止。いずれジャンク品でオクにでも出すかと思って放置していたのですが、3ヶ月くらい前に何となく引っ張り出してきて、出品前に少しでも整備しとくかと、トランジスタの足を歯ブラシで磨いてワニスでコーティングしたら、ノイズの症状は治った模様。トラブルの原因はトランジスタのウイスカ現象だったのかな?
それでもメインスピーカーにつなぐのは怖いので、それから3ヶ月くらいPC用スピーカーでPC音源用アンプとして使っていたのですが、その間トラブルはなかったのでいい加減大丈夫かな?と、現在のメインであるDitton66に接続してみました。
このTA-4650は出力段にV-FETを使用したDC構成のアンプとして有名。SONY一連のV-FETシリーズとしては一番安価なモデルではあったのですが、1976年当時の定価は84,800円だそうでそれなりの高価格機種でした。今の価格だと15万〜20万円のアンプってイメージでしょうか。
ステレオサウンドのNo.33を引っ張り出してみると、このTA-4650に関するテストリポートが掲載されています。
概ね好評な評価ではありますが、評論家の皆さんが少し戸惑い気味なのが面白い。
音の特色は「声の上に何か付帯音が付く」という感じだそうで、中高域に独特のキャラクターを感じるとのこと。自分で聴いても確かにそのようなイメージは感じます。何というか、低域と中高域で別のアンプが鳴っているように聞こえなくもない。これがV-FETによるもなのか何なのか分かりませんけど、確かに個性的な音です。低域はやわらかく、高域は少し堅い。
もっとも、こういう書き方をするとマイナスみたいな印象ではありますが、私個人としては面白い音だと思います。中高域の音は堅いけど何かとろん…とエッジが溶け落ちているというか、硬い石の上に薄く柔らかいものでコーティングしたような、そんな耳障り感があります。いずれにせよ他のアンプではあまり聴けないちょっと面白い音です。
同じ号のステレオサウンドには、TA-4650の見開き広告も掲載されています。「すきとおる秋の空ようなクリアな音を聴いたなら…もう、その魅力だけで15万円のアンプにも匹敵すると言えるでしょう。」と、自信たっぷりです。
自宅のDitton66で鳴らすと、ちょっと低域のパワーが足りないかなあ…なんて思うのですが、この中高域の音は独特で結構クセになります。本機はプリとパワー段を切り離して使えるので、純粋にV-FETを堪能したいのなら、上質なプリアンプを奢ってあげると面白いのかもしれません。
私としては、このV-FETは既に生産されていない貴重な石なので、あまり無理をさせずに、のんびりと使い切ってあげようかなと思っています。
最後に簡単なバイヤーガイド的な情報を。
このエントリ書いている時点でのTA-4650の価値ですが、中古価格はオクなどでは完動品で1万円前後?今だともう少し行くのかな…いずれにせよ終段が壊れると修理不能なのでこれは運ですね。中古販売店ではもう少し価値があって、きちんと音が出るなら概ね3〜4万円くらいで取引されているようです。人気という程でもないですが、V-FETマニアというのはそれなりにいるみたい。
ジャンクだとそれこそ数千円ですが、当然ながら音が出ない状態のジャンクは終段が死んでいる可能性があるので、その場合は修理はできません。一時期は中国製らしいV-FET互換の石が出回ったらしいのですが、なんでもSONY製の石とはバイアス電流が違うらしいのでそのままでは使えないという話。まぁ…そこまで手間をかけて修理するモノかな?とは思いますが、確かに個性的なアンプではありますので、ハマると抜けられないのかな。
ファンが多いせいか、このTA-4650に関してはWebで検索すると修理情報がそこそこ拾えますので、腕に自信がある方はジャンクを探してチャレンジしてみるのもいいのかも。
こちらは自分で修理…といえるモノではないですが、基盤上にあるトランジスタの脚を磨いて、その上からワニスを塗っているところ。このクラスのアンプとしては珍しく、各セクションがドーターボード形式で取り外せますので、整備性はとても良いです。
それらをつなぐ配線などは、紐でキッチリと縛ってあったりして、この価格帯のアンプでこういう手作り感あふれる構造は珍しいというか、当時のソニーの戦略価格機種だったんだろうなぁと感じます。