鉄分補給:くりはら田園鉄道編
flatearth.Blog* » おでかけ » 鉄分補給:くりはら田園鉄道編
近頃疲れやすい。鉄分が足りない…と思った私は、夏休みを利用して今年度いっぱいで廃止が決まっているローカル線、くりはら田園鉄道へ乗りに出かけることにした。これで鉄分を補給してリフレッシュ!
家を出かけたのは、8/10日の夜23時頃。埼玉県から国道4号線をMGFで北上。今回は途中の道を楽しまず、まっすぐ目的地に向かうことにしたので、延々と4号線を走り続ける。そして仙台市内に入ったのが次の日朝の4時過ぎかな。途中船台手前の館腰駅で貨物列車の通過風景を見る。この時間の東北本線はJR貨物の独壇場で、無人駅のホームで待っていると、都内山手線並の運転間隔で長編成の貨物列車がバンバン走り抜けていく。スピードも結構速いので、見ているとちょっと怖い。
その後、また国道4号線を北上。目的地の細倉マインパーク駅は、宮城県といいつつ岩手県との県境に近いので、仙台からだとまだ距離がある。そんなこんなで目的地に着いたのが朝の6:30過ぎ。始発電車が丁度出て行ったばかりだったので、駅前の無料駐車場に車を止めてしばらく待ち、7時過ぎの電車に乗ることにする。まず車掌さんに「一日乗車券はありますか?」と聞いたら、なんでもくりはら田園鉄道(以下「くりでん」)駅や車両内では扱っていないらしく、栗原市役所とその支所で売っているとのこと。運転手さんに聞いてみると、そこから二つ先の鷺澤駅近くに支所がある。早速そこまでの切符を買い、鷺澤駅で下車。ただ、この時点での時間が朝7:30頃だったので、当然支所はやっていない。一応宿直の人に聞いてみると、8:30から支所は開くとのこと。それまで駅の回りをぶらぶらして時間を潰すか…と思って支所を後にすると、宿直の人が走って出てきた。「くりでんの次の電車は8:31だから8:30だと間に合わない。15分くらい前に来れば職員は出所しているので、その頃来た方がいい」と教えてくれた。ありがとうございます。
その後鷺澤駅付近をふらふらしながら写真を撮り、余った時間は駅のホームでカメラバックを枕に睡眠。朝の曇り空とひんやりした空気、それと一日が始まる前の静寂がなんか心地よい。しばらくするとおじいさんがやってきて、またしばらくすると、おばあさんがやってきて、待合室でおしゃべりを始めた。その声で目が覚めた私は、再び支所に行って、くりでんの一日乗車券を購入した。ちなみにこの一日乗車券、ボチボチ品切れ気味で、実は私が行った支所では既に在庫が無く、すると室長と思われる人が個人で持っていた一日乗車券を、これでいいならと売ってくれた。どうもありがうございます。こんな風にここの沿線の人達はみんな親切でいい人ばかりだった。
一日券を手に、再びくりでんに乗車。次はJRとの接続駅である石越駅まで乗ることにする。初めはがらがらだなと思っていた車内も、途中で人が結構乗り込んで立ち客も出てきた。ただ、何故かみんな途中で降りてしまい、終着駅まで乗車する人はほとんどいない。なんでもこのくりでんは、元々鉱山の貨物をJRの路線まで運ぶために作られた鉄道で、地元住民にとっては路線と人の流れが一致していないとのこと。その為、みんな途中で乗って途中で降りてしまうみたいだ。
そして終点の石越駅に到着。1枚目の写真は石越駅で撮影した主力車両KD95型。ちょっとクラシカルな外見だが、実は平成6年富士重工製と意外に新しい車両だったりする。上部ヘッドランプがカンテラ風になっているのが面白い。石越駅は無人駅で、なんだかホームの反対側は砂利の駐車場みたいになっていて、列車が停まっていなければ駅には見えないだろう。つか始発であり唯一の他線接続駅が無人というのもちょっとすごいと思う。駅舎はかつての有人駅時代そのままで、なかなか風格のある建物。くりでんの駅舎は大正時代に建てられたものが多いらしく、確かにクラシカルな木造建築になっている。次の列車まで1時間以上空きがあるので、石越市内を散歩しつつ、次の駅まで歩いてみることにした。
駅前の町並みはかつてそれなりに賑やかだったんだろうなという感じだが、今ではすっかり寂れているように見える。ちょっと歩くと田園地帯になり、大分日差しが強くなってきた田んぼの中の道をひたすら歩く。こんな時は一人で来て良かったなと思う。同行者がいると「じゃ、次の駅まで歩こう」とか「駅で昼寝しよう」とか言えないからね。私はクルマで出かけるのも好きだが、列車で出かけるのも好きで、なおかつ目的も無しに歩き回るのも大好きだからね。つか、みんな目的地にパッと来てパッと帰るだけの旅行って何が面白いんだろう…ま、そんなことはいいけど。
こんな風景の中を30分くらい歩くと、次の駅である荒町駅に着く。石越駅から1キロくらいだというから、まっすぐ歩けば15分くらいで到着できるだろう。そこの荒町駅では、女子高生1人と関西から来たというテツが1人列車を待っていた。軽くテツの人とおしゃべりをした後、次はマインパーク前行き下り列車に乗車。隣の若柳駅で下車する。
ここの駅は有人駅であり、またくりでんの車両基地もある。オールドタイマーの車両を愛するテツにとってはたまらない駅だと思う。かつて電化時代に使われていたくりでんの電車や(この路線は全国でも珍しい電化から非電化へと変身を遂げた路線でもある)、木造の貨物列車!などといったお宝物件が、特に保存しているというわけでもなく車両基地に放置してある。駅員さんの許可を取れば、基地内を歩いて見物することも可能。また車両だけでなく駅舎の方もなかなかのもので、タブレットや手動切り替えポイントと信号機、チッキの跡など、もうこのまま鉄道博物館として改装すれば?と思ったりもするお宝というか貴重な文化遺産がそのまま現役で使われている。無くなるのは惜しいなぁ…・
若柳駅では2時間待ち。再びホームの隅でカメラバックを枕に昼寝をする。1時間くらい空の下でぐっすり眠った後、折角なので若柳市内を散策して、ついでに次の駅である谷地畑駅まで歩く。この時間になると薄曇りだった空もすっかり晴れ渡り、日差しが結構きつい。歩きながら周辺民家を観察したりして、どうもこの地方の家は新築でもトイレは家の外に建設することが多いみたいだな…などと思いながら田園風景を散歩した。
谷地畑駅に着いたのは正午過ぎかな。近くのコンビニで食料を調達しようかと思ったんだけど、なんとなく駅にいるのが気持ちよくて、地べたに足を投げ出してくつろぎながら列車がくるのを待つ。この写真は谷地畑駅で撮影した今回のお供「DONKE君」。ありえない量の交換レンズとその他諸々を突っ込まれて悶えています。つか、悶えているのは私の肩か?
その後再びやってきたマインパーク前行きの下り列車に乗り、終点まで乗車。とりあえずくりでんの乗車はここでお終い。その後Fで途中の栗駒駅に戻り、くりでんオリジナルのマグカップとテーマ曲CD(アーティストはなんと姫神だ!)を購入。ここの駅もとてもクラシカルな風情を保っていて、現地に出かける人は是非見学に訪れてほしい。また今回は歩き回ることができなかったが、栗駒駅前の商店街もなかなか風情があって散歩しがいがあるポイント。次回があれば是非この町は重点的に歩き回ってみたい。
最後にくりでんの未来について。この鉄道は2007年の3/31日で廃止となる。なんでも宮城県からの補助金が支給されなくなったのが原因だそう。ただモノの本によると、くりでんの収支と地元の寄付、それを含めてあと年間2~3千万円の資金があればこの鉄道は維持できたという話らしい。2~3千万円の感じ方はそれぞれだと思うが、私個人としては、なんでそんな事でこの鉄道を廃止にしてしまうのか、強い憤りを感じる。途中鷺澤駅近くで、どう考えても需要がないだろうなと思われる立派な県道と橋の工事をやっていた。あの資金があれば、この鉄道はあと10年以上は存続できるのではないか?2~3千万円といえば、定年まで勤め上げた公務員の退職金1人分だ。この金額を惜しむおかげで、この沿線の街は、鉄道があった街から、ただの無個性な地方都市へと変貌してしまう訳である。こういったイメージ面での問題は非常に大きいものではないか?鉄道が無くなったこれら沿線の街には、もう観光客が訪れることはなくなるだろう。また、かつて栗駒山の登山口として栄えた栗駒町も、ただの田舎町になってしまう。こういった無形の財産を失なう損失はお金で換算できないものがあると思うよ。そのお金だって、年間数億円という単位ならともかく、たかが2~3千万円じゃないか。そんな金、周辺自治体と宮城県でいくらでもちょろまかせる金額なんじゃないかとも思う。
もう廃止は決定事項なので、いまさら覆されるとは思えないが、この個性的で、なおかつ親切な駅員さんと気さくな周辺住民の方々のコミュニティーを作ってきた鉄道が無くなるのは、本当に残念だと思う。ああ、ずっときえないでほしいよ~。
最後の写真は、鷺澤駅ホームにMGFを乗り入れて記念撮影した写真。つか、ホームにクルマを乗り入れるなんて当然禁止されている行為だと思うけど、この鷺澤駅って、どこが駅前広場でどこからがホームなのかよく分からない構造になっているんだよね。つことで、ご迷惑でしたらごめんなさい。
ちなみに帰りは再び国道4号線を南下。途中仙台市内の知り合いの事務所に寄って、また国道4号線を南下して帰ってきた。MGFの50Lガソリンタンクは、これらの距離を往復してもまだ余裕♪