海女の島―舳倉島/フォスコ・マライーニ
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舳倉島と書いて“へぐらじま”と読むらしい。今では渡り鳥の中継地としてバードウォッチャーにはすっかり有名な島らしいが、この本が書かれた1950年代後半は、中央から取り残された、まだまだ原日本の風景・習慣が色濃い地方だったみたいだ。
未来社の書籍にしては、冒頭のグラビアページが多く、またその写真はかつて日本の各地に存在した“海女”の写真が多数掲載されている。本グラビア撮影で中心となった女性は当時18歳だったそうだが、上半身裸で腰には紐のようなふんどしを装着している。
かつての日本人は、男女ともにコミュニティ内の人間にはお互いの裸を見られる事への羞恥心があまりなかったそうだが、このグラビアにも、演技では到底不可能なはち切れんばかりの笑顔が含まれた海女達の日常が納められている。
また、イタリア人の著者にとっても、この状況は驚きであったらしく、更にこの海女達の日常に近づくため、同行のイタリア人女性にも上半身裸で歩き回るよう指示したそうである。
このように、色々な意味で時代を感じさせる、また現在ではどんな事をしても再現不可能な「過ぎ去った日常」を記録したドキュメントとして、本書はとても貴重だと思う。
ちなみに表題にある“海女”についての文化的考察はほとんどないので、そういった内容を期待している人には不向き。あくまでも異文化とのコミュニケーションにおけるドキュメントと考えた方がいいと思う。そして、現在の私たち日本人にとっても、視点はこの「イタリア人」寄りであり、とても興味深い。
海女とは関係ないが、文中にある「日本は昼よりも夜の方がより日本を強く感じさせられる」という下りは、私自身確かにその通りだな…と思った。