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港町のかたち—その形成と変容/岡本哲志

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 交通の歴史に興味を持っている。昔の人たちが、何を考え、何を求めて、世界を駆け巡っていたのか。そしてその足跡は今でも残っているのか…そんな事をよく考える。

 本書は、そんな日本の交通史の中で、かつては大量輸送の花形であった、海運で栄えた街の足跡を辿るという本。面白いのは、この手の現地調査ではその現地に入るまでの交通手段にはあまりこだわりがない事が多いが、本書については可能な限り海の側から訪れ、また海の側から街の景観を確認していること。

 かつての水運と言えば、海もそうだが、日本は河川の水運も盛んだった。私がちょうど子供の頃は、近くに流れる川を利用して、海から大量の木材をプライウッドの工場に運び込んでいる姿をよく見た。牽引しているのは、焼き玉エンジンを搭載した「ポンポン船」そして牽引している材木の上には、鳶のようなおじさん達が、器用にくるくる回転する材木の上を歩き回っていたものだ。そんな風景も、私が大人になることには、すっかり消えて、川からは人の流れが消えた。

 同じ事が海にもいえると思う。大規模なコンテナ船やタンカー、フェリーなどは就航していても、もっと身近で小回りのきく交通手段、運送手段として、水辺は漁業を行っている人以外には「利用されない」空間になった。関西での事例は余りよく知らないが、特に関東以北では、人と海の距離感は、だいぶ離れてしまっているように見える。東京湾なんて内海なんだし、本当はもっと細かく旅客船が就航していてもよいような気もするのだが…。

 そのように、かつて交通の要所として栄えた日本の港町は、今では多くが、小規模な漁業港としてのみひっそり生き延びているのがほとんどだ。しかし、そのある種都会の喧噪から隔離され、穏やかにも見える港町は、陸上交通が主流になる前は、物流の拠点として、新しい物や情報であふれていた都会だったのである。

 近代社会が、納期が天候などの要因で左右されやすい、近・中距離海運から撤退しつつあるのも理解できるが、逆に言えば、そのような必要性の薄い用途において、もっと水運を積極的に利用できる社会というのは、創造できるのではないか。本書を読んでそんなことを思った。

港町のかたち―その形成と変容/岡本哲志

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