ブローデル/地中海
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会社の近くにある古本屋(といっても日本一の古本街の一角ではあるのだが)で、セット売り10,500円で売りに出ていて、数日悩んだあげくつい買ってしまった(笑)。読まなければいけない本が貯まっているのになぁ。
きっかけは、今の仕事で「地中海」関係のWebサイトについて企画していることから。なんとなく地中海についてググっていたら、この本にヒットしましたという訳。
ブローデルの「地中海」は、歴史書としては古典ながらも当時は革新的な視点をもって描かれた書として有名だった。日本では藤原書店が頑張って翻訳版を出していたが、昔は一冊6,000円以上(だったと思う)した上に全5〜6巻だったはずだから、金銭的にとても手が出る本ではなかった。
私も何度か本屋さんで立ち読みをしたが「読んでみたいけど高いよな〜」と思って手を出さずにいた。かといって図書館で借りてはみたものの、借り物の本ってのはあまり気合い入れて読まないものなんだよね〜。ちょっと読んで返却してしまった覚えがある。
さすがに藤原書店側もちょっと高すぎると感じたのかどうか知らないが、その後に発売されたのがこの「藤原セレクション版」。全10巻で一冊1,200〜1,800円前後、税込みで全て集めても2万円弱で読破が可能ということで、それなりに売れたのか、安すぎて採算が取れなかったのか、割とすぐに絶版になってしまい、今では「普及版」という、あまり普及価格でもない4,000円前後、全5巻というボリウムでまとめられて出版されている。
内容としては、かつての「人物・事件」を中心とした歴史記述ではなく、地中海という地域と気候、その他環境から生み出された歴史という視点で描かれたのが斬新であったらしい。
私も試しに1巻だけ読んでみたのだが、なるほどなるほど…地中海はそのほとんどが山と接しているってのも、言われてみて改めて気がつく事実だよね。その沿岸部のほとんどは切り立った崖などで構成されている地域が多く、不覚にも地中海と言えばエジプトやベネツィアの平地に面した海を何となく想像してしまっていた自分はいきなり出鼻をくじかれた感じ。
環境から歴史を語る視点というのは、日本では各民族学者達や網野氏を始め、その他在野の優秀な歴史家が沢山いるので、私的にはこの視点には馴染みすら感じてしまうのだが、西洋で、しかもこの本が書かれた1949年では斬新な考え方だったのかも知れない。
歴史書の古典ということで、何となく難解な内容を想起してしまいそうだが、少なくともセレクション版の1巻については、地中海をまるで空から眺めて飛行しているかのごとく、発見と驚きの連続でドキドキしてしまう内容だった。
今では自腹で購入して全て読むには2万円弱のお金がかりますが、普及版の1巻だけでも読んでみるのもいいいのではないか…と思いましたよ。自身の中の、地中海沿岸とイタリアの歴史感が少し変わるかも知れません。