ドッグファイトの科学/赤塚聡
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空戦の大原則。「運動エネルギーが多い方が有利」。「速度と高度は等しく運動エネルギーに変換される」。
つまり、空戦は速度が速い方が有利。また、速度が足りなくてもその分高度がある方が有利、ということになります。この原則は本書だけでなく、空戦について解説している本、全てに書いてあります。
私もですが、この原則が頭でわかっていても、なかなか感覚で理解できないんですよね。なんせ、人は地上…つまり二次元で生きている存在ですから。
つことで、本書のように、実際空を飛んでいる人が実例を書くとわかりやすいですね。
例えば、敵機の後から速い速度で進入したときは、ブレーキをかけるのではなく、一度ホップして速度を高度に変換するんですよ。そうすれば、運動エネルギーを捨てることなく、敵機の後を追尾し続ける事が出来ます。
そして、空戦でもっとも恐れることは、激しい旋回や特殊なマヌーバを繰り返して、運動エネルギーを失ったまま戦域に留まることです。これは絶対に避けなければなりません。
私も学生の頃はそれなりに空戦に興味を持ち、友達と一緒に様々な空戦のシミュレーションゲームをやってみました。でも、頭でわかっていても、なかなか3次元の機動というのは、うまく利用できないんですよね。
それと、フライトシミュレーターのようなゲームをやってみても、どうしても旋回で相手の後を取ろうとしてしまう。でも、実際の空戦は違うんですよね。何故旋回力に勝る零戦が、旋回力が劣るけど馬力のある米軍機に苦戦するようになったのか、本書では実にわかりやすく書いてあります。
おそらく、今生きている人の99.99999%の人にとって、空戦のロジックなんて知らなくてもいい事だし、知っていても人生で役立てる機会はないでしょう。
しかし、テレビアニメや映画で目にする空での戦いが、実際は物理に支配された現象であるという、驚きの世界を知るのは悪くはないと思います。