メディアの発展と衰退について
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世の中のブームとか文化(?)の遷移について、オーディオ評論家の長岡鉄男氏が著作の「いい加減にします」で説明されていた理論。私的には現代においてもとてもわかりやすく、正しい理論だと思うのだけど、不勉強ながらネットで解説されているページを見たことがありません。
ということで、記憶だけで書いてますが、この理論について説明してみます。原文を読みたい方は古本屋さんで「いい加減にします」を探して買ってみて下さい。ちなみに「知的レベル」という言い方はちょっと差別的というか排他的な印象がありますが、原文もこんな言い方だった気がします。
ここでいう知的Lvというのは、学校の偏差値と思って頂ければ判りやすいと思います。有り体に言えば馬鹿も天才も等しく存在して、その中間が一番多いという前提です。というか、現実の世の中もこんなもんですよね。
また、この「知的レベル」については、ジャンルごとに人それぞれ所属するレベルが違うということもあらかじめお断りしておきます。例えば世の中音楽が大好きな人もいるし、映画が大好きな人もいるって話。音楽ならLv5でも、映画はLv1って人もいる…というか、殆どの人はそうやって得意ジャンルに偏りがあると思います。
第一段階
ラジオ放送でもテレビ放送でもインターネットでも構いませんが、新たなジャンルのメディアが生まれたばかりの頃の状態。初期はいわゆる「アーリーアダプタ」の人にターゲットを絞り、物珍しさで手を出す人が主な対象。そしてそこから裾野を拡大してゆく方式がとられる。そのため提供されるコンテンツはターゲットを絞った知的なレベルが求められ、いわゆる「文化的」「芸術的」な価値があるコンテンツが多い時期。知的レベル的にはLv5の人をターゲットにしているが、背伸びをしているLv4の人も楽しんでいる。
第二段階
初期のマーケティングで成功して、順調にメディアの利用者が増えた所で、更なる拡販を目指し、提供するコンテンツのレベルを4に下げる。この段階でLv4の人達がメインターゲットとなるが、Lv5の人達もまだ利用している。また、もっとも人数が多いLv3の人達も、ちょっと知的な気分に浸れるということでターゲットとなり、メディアの利用者の総数が増えるため、一般的には成功例となる。
第三段階
更にメディアの利用者を増やすため、マーケティング分析の結果、提供するコンテンツはLv3をメインターゲットとする。もっとも人数が多い偏差値中央を狙うため、ユーザー数がもっとも増える。代償としてLv5のユーザーはメディアより離れてゆくが、代わりに背伸びをしたLv2のユーザーも対象となるため、全体ではユーザ数が増加。おそらく全てのジャンルのメディアにおいて黄金期の状態。
第四段階
メディアの主から更にユーザーを増やせとの命令を受けたマーケッターは、次の段階に突入!ここで多くのジャンルが間違いを犯すのだが、現状維持ではメディアの主(株主?)は満足しないし、かといって従来のようにLv4にコンテンツを戻す提案をしても「過去と同じならユーザーが減るじゃん!」と却下され、やむなくコンテンツのレベルをLv2に下げる事とする。この時点でLv4のユーザーは去るのだが、新規でLv1のユーザーが参入。結果ユーザー数は減るのだが、Lv4のユーザーは既にそれなりの時間、提供されたメディアを楽しんだ為、去るときの文句も少ない。逆にこの段階でコンテンツのレベルを上げてLv2のユーザーを切り捨てると、このメディアをまだ充分楽しんでいないせいか(判りやすくいえばテレビ買ったばかりなのに!みたいな)苦情が多くなる。もう引き返せない!
第五段階
減ってしまったユーザーを取り戻すためには、更なる拡販を目指すしかないのだが、前段階でもあったように、時の流れは戻らない(笑)。未知への領域としてコンテンツレベル1に下げ、Lv1のユーザーの満足度向上を狙うのだが、図の通り、ここで最大数であるLv3のユーザーを失ってしまう。こうやってメディアは死滅してゆく。
おそらく、上記みたいな現象というのは、プロのマーケティングでは常識なんだと思うんですよね。ただ、メディアが生まれそのコンテンツを選択する段階で、ひとたびレベルを下げ始めると、様々な要因で止まりません。
上記の図でも、仮にLv2の段階で間違いに気が付いても、一度去ってしまったユーザーを取り戻すより、新規のユーザーを獲得する方が、基本的には簡単。そのため、提供するコンテンツのレベルはどんどん下げてゆくしかない。
ちなみに、私的な感想ですけど、今のテレビ(主に地上波)は、Lv2からLv1に移行している段階だと思います。