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ベーシックインカムという幻想

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 日本でもベーシックインカムとい言葉が流行り始めてきました。

 「1人7万円」のベーシックインカムは可能か:東洋経済ONLINE

 ベーシックインカムというのは、生活保護を廃止する代わりに、国民全員に一定額のお金を支給するという制度。上の記事にもありますが、日本では実施されると7万円前後ではないかといわれていますね。
 確かに、現在の家計から7万円プラスになれば、生活は多いに楽になりそうです。私なんてその日暮らしの貧乏ですから、毎月何もせずに7万円収入が上乗せされると思っただけで、無駄遣いしたくなっちゃいますね。

 とまぁ…そんな単純に喜んでいいのか?
 個人的には、7万円の支給については、様々なルールと新しい法律で用途を限定しないと生活の足しにならないのではないかと思います。

 まず、例えば私がお金持ちの資本家だったら考えること、国民全員毎月7万円もらえるんだったら、社員への給料7万円減らしていいよね…ってこと。もちろんこんなにわかりやすく実行される事はなく、例えば新卒やアルバイト、派遣などの給与を下げる方向に行くでしょう。
 なんたって彼等は毎月7万円を国からもらっているのです。だったら…今の専業アルバイトに毎月10万円払っているお金も、せいぜい5万円程度渡せば問題ないだろうなんて話になるのでは?

 それと次に思いつくのは住む場所の家賃ですね。今まで5万円で提供していた部屋も、国民全員が毎月7万円もらえている前提なら、12万円に値上げしても生活レベルは変わらない訳です。これもそんなにわかりやすい話ではないかもしれませんが、まぁ、7万円以下で住める場所は消滅しそう。

 あと、他に思いつくのは、人身売買的な非合法の世界かな。つまり、身柄を抑えていれば、誰でもそのまま毎月7万円の利益を生む訳ですから、今まで無い場所からは回収できなかった非合法な金融商売やってる人達には新たなビジネスチャンスになりそう。戸籍の非合法な取引も活発化するかもしれません。

 そして最大の問題点は、国民誰もが毎月7万円何もせずにもらえるということは、逆にいえば7万円という価値は限りなくゼロに近づくということ。さすがに食料品などの日常品は別にしても、いわゆる「耐久消費財」を初めとする高額製品は、あるいみそのまま7万円上乗せされて取引されるようになってもおかしくありません。

 そんなアホな…と思う人もいるかもしれませんが、そもそも経済ってそんなモノですよね。貨幣などの財産価値というのは、所在にムラがあるからこそ価値がある訳で、極端な話国民全員が1億円持っていれば、だれも1億円なんて欲しがらなくなる訳です。で、欲しがらなければ、他人に何かしてもらう為には1億円以上の報酬を用意しなければなりません。例えば派遣社員の給与が1億15万円とかね。1億円は全員持っている財産なので、そこに価値は発生しません。

 もちろん、上記は極論です。
 実際貨幣の利用には流動性があり、ベーシックインカムで手に入れた7万円と労働で手に入れた7万円は区別できないので、単純に7万円という価値がゼロになる事はないでしょう。ただ、貨幣の価値は明らかに下がるはずで、ベーシックインカム実現に当たっては、様々な法整備が必要になるかと思います。

 そういった具体的な話が出てこない所を見ると、日本でベーシックインカムが行われるとしても、ずっと先なのかなと。

AI時代の新・ベーシックインカム論(光文社新書)/井上智洋

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